ブラジルに現れた新たな“ジョイア” ネイマール以上と評される特別な18歳

沢田啓明

逸材中の逸材ガブリエル・ジェズス

名門パルメイラスに所属する18歳のアタッカー、ガブリエル・ジェズス(右)は逸材中の逸材と評されている 【Getty Images Sport】

 今、ブラジルで「天使と神の名を持ちながら、悪魔のようなプレーをする」と評され、「ジョイア・ラーラ」(稀有な宝石)、「フェノメノ」(異常現象)と呼ばれる少年がいる。

 ガブリエル・ジェズス、18歳。名門パルメイラスに所属する童顔のアタッカーだ。

「ガブリエル」はキリスト教の三大天使の一人で、「ジェズス」とはイエス・キリストのこと。そして、「悪魔のようなプレー」というのはもちろん相手チームにとっての話。抜群のスピードと驚異的な技術を備え、大胆不敵なアイデアでマーカーを手玉に取り、貪欲にゴールを狙う。

“ジョイア”とは、将来、スーパースターになりうる傑出した素質を持つ若手を指す。近年、こう呼ばれたのがネイマール(バルセロナ)だ。また、「フェノメノ」は元ブラジル代表センターFW(CF)ロナウドの代名詞。つまり、「近い将来、とてつもない選手になる可能性を秘めた逸材中の逸材」と見られているのである。

 体つきは、ネイマールとよく似ている。細身だが頑丈で、故障はほとんどしない。右利きだが、左足も同様に使える。

 パルメイラスでは通常4−2−3−1の2列目左サイドに入る。高速ドリブルでサイドを突破してクロスを入れ、相手守備陣の裏へタイミング良く走り込んで強烈なシュートを放ち、右サイドからのクロスにゴール前、あるいはニアサイドまで走り込んでダイレクトで合わせる。つまり、ウイングとストライカーの一人二役を演じることができるタイプで、この点もネイマールと似ている。

 また、ブラジル人FWには珍しく、守備にも貢献する。中盤はもちろん、時には自陣深い位置まで戻ってボール奪取を狙う。天才肌でありながら、戦術理解能力が高く、チーム戦術に忠実にプレーするのも大きな長所だ。

17歳でトップチームデビュー

 1997年4月3日、サンパウロ生まれ。ロナウジーニョ(フルミネンセ)に憧れて、5歳のときにボールを蹴り始めた。地元のアマチュアクラブを経て、2012年、15歳でパルメイラスの下部組織に加わった。

 昨年、U−17サンパウロ州選手権で22試合に出場して実に37得点を挙げ、それまでの得点記録を大幅に更新。これがサポーターの間で大きな話題となり、早期デビューを待ち望む声が高まった。

 今年初め、トップチームに昇格。このときの監督がオズワルド・オリヴェイラ(元鹿島アントラーズ監督。その後、退団し今年8月からフラメンゴ監督)で、「特別な才能を持った選手だが、段階を踏んで大切に育てる」とヒートアップする周囲をけん制した。

 デビューしたのは、3月7日のサンパウロ州選手権のブラガンチーノ戦(1−0)。後半27分、交代出場のためタッチライン際に立っただけでスタンドが大きくどよめいた。

 当時、まだ17歳11カ月だったが、いきなり“違い”を見せつけた。二人のDFに囲まれると、ボールを頭上に浮かせてかわす。前を向いてボールを受けると、右足アウトサイドで絶妙のスルーパス。思い切りの良いミドルシュートを放ったが、これは惜しくも外れた。サポーターは「噂のジョイア」のはつらつとしたプレーに大喜びで、総立ちで拍手を送った。

 ちなみに、6年前のこの日、やはり17歳でデビューし、シュートをバーに当てるなど大物ぶりを発揮した選手がいる。当時サントスに所属し、現在はブラジル代表のエースに成長したネイマールである。

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著者プロフィール

1955年山口県生まれ。上智大学外国語学部仏語学科卒。3年間の会社勤めの後、サハラ砂漠の天然ガス・パイプライン敷設現場で仏語通訳に従事。その資金で1986年W杯メキシコ大会を現地観戦し、人生観が変わる。「日々、フットボールを呼吸し、咀嚼したい」と考え、同年末、ブラジル・サンパウロへ。フットボール・ジャーナリストとして日本の専門誌、新聞などへ寄稿。著書に「マラカナンの悲劇」(新潮社)、「情熱のブラジルサッカー」(平凡社新書)などがある。

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