山田大記がドイツで感じた限界と伸びしろ ファンに伝えたかった成長への思い

中田徹

フェイスブックにつづった言葉の意味

ヨーロッパに来て自分の限界を悟ったという。しかし、「勝負はその現実を知ってから」とも山田は話している 【Bongarts/Getty Images】

 山田はブログやSNSで積極的に自分の思いを述べる選手だ。0−6で敗れたブラウンシュバイク戦後、彼はフェイスブックにこうつづった。

「今日の試合とは関係なく僕は痛感したことがあります。(中略)世界は広く上には上がいて僕は凡人だなと。自分の才能の限界を悟ったけれど、勝負はその現実を知ってから。そういう壁みたいなのを感じた時こそ本当のスタート」

 この文章の思いを、山田に問うてみた。

「限界というか、今の立ち位置をすごく感じましたね。ドイツに来てDFの寄せ方とかがうまい中で点を獲れていないのもそうだし、1部の試合を見てもさらにレベルの高いところでプレーしている選手がたくさんいる。もちろん、あの中に入れば(自分も)できると思いながらも、現にオファーがなくここに残っているし、チームとしても1部に上がれなかった。昨季は、自分が後半戦でもう少し、3点でも4点でも獲れていれば勝ち点5ぐらい上乗せできたかもしれない。実際、自分が決めていれば勝てたという試合もあった。そこで決めていれば自動昇格もできたと思う。そういうのを含めて全部力不足。そこはジュビロ(磐田)の時から感じていたんですけれど、ヨーロッパに来て厳しいところでやると……。

 でも、僕としては良いところにいさせてもらっているという意味で書きました。サポーターからは励ましの言葉が来ていたから、そういうふうに映ってしまったかなと思った。0−6だし、『ああ、もう駄目だ』ということで書いたわけじゃないです。

 サポーターの方たちのメッセージを読んでいるといろいろなことがあって人生を歩んでいる感じがある。だから自分も良い時ばかりではなく、そういうこと(悪い時にも文章を)書いて。みんなからしたらサッカー選手になってドイツで夢を追いかけている自分にも、いろいろなことがありながら頑張っているという意味でのメッセージだったんです」

日本代表への強い思い

山田は日本代表についての強い思いを明かした 【写真:築田純/アフロスポーツ】

 山田はフェイスブックに「自分の才能の限界を知ったと言いましたが、同時にさまざまな伸びしろを感じているのも事実です」とも書いている。本当に山田がファンに伝えたかったのは、ここの箇所ではないだろうか。

「そうですね。年(26歳)はもう若くないですけれど、まだここでうまくなれると感じる。やっぱり正直、これまでは日本だから、Jリーグだから点を獲れていたと思ったんですよ。(1年前)6点獲れたのがたまたまだったような気がして。もちろん、そうだからといって(半年以上)点が獲れないのを運のせいにしてはダメですけれど、少し運も悪いなと。でも、しっかり点を獲っていく実力がまだないというのを感じる。それをハッキリ感じられる環境、改善できる環境なので、そういう意味で良い環境にいる。それが一番です」

 日本代表への強い思いを山田は明かす。

「やっぱり“代表”というものに自分は一番こだわっているところなので、そこは2部でもたくさん点を獲れば呼んでもらえる可能性はゼロでないと思うし、もちろん1部で活躍すれば間違いなく呼んでもらえると思うので、そういうところを実力で勝ち取れるようにしたいですね。

 1部リーグと2部リーグだったら、もちろん1部の方が上です。結果的にドイツで1年やってオファーが来てないということ。1部へ行ったらやれるとは見ていて思うんですけど、行けてないというのは、それはそれで自分の実力だと思う。環境とは、自分の実力に合ったものが与えられると思うから、その実力を昨シーズン見せられていたらチームとして、もしくは個人として今は1部リーグでプレーできていたと思う。それが実力だと思う。それは悲観的な意味ではなくてです」

 ちなみに「伸びしろがある」とは、具体的にはどこを指すのだろうか。

「全部ですね。やっぱりいろいろなところで未熟さを感じる。もちろん通用するところも感じますけれど、やっぱり一個一個の質をもっと上げないと。でも、それはサッカー選手だったらみんな持っている。でも、今はよりそれを感じさせてもらえる環境です。

 代表の話に関しても、確かに日本からしたら2部というのは放送もないし、放映権もないから全然陽が当たらない。やっぱりJリーグの方が注目されるかもしれないですけれど、自分が成長するという意味では本当に良い環境にいさせてもらっていると思える。だからこそ、変な焦りはないです。焦りは常にあると言えばあるんですけれど」

 それは時間との戦いだろうか。

「それは日本にいた時から常にありますね。 僕は大卒だったから、1年目2年目で代表にという思いはずっとあった。今は、早く1部にというのもありますし、早く代表にというのもあります。けれど、それでもここは成長できる環境。監督、チームメート、サポーターに恵まれているというのもすごく感じるし、『ここじゃ、何も得られない』というのとは全く違う心境ですね」

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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