ブラサカ日本代表が築き上げた夢の舞台 パラ出場ならずも、表現した自らの能力
「目を使わない」というルールを加えたサッカー
ブラサカ日本代表はアジア選手権で4位に終わり、パラリンピック出場を逃した 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】
大会は、初日から5日目まで6チーム総当たりのリーグ戦があり、最終日にはリーグ戦1位と2位による決勝戦、同じく3位と4位による3位決定戦、そして5位決定戦が行われた。パラリンピック出場権は、上位2チームに与えられる。つまり初日から5日間の総当たり戦で、上位2位までに入ることがリオデジャネイロ行きの条件だ。初のパラリンピック出場を目指した日本代表は、5日目までの勝ち点で中国、イランを下回り、その切符をつかむことができなかった。
このコラムでは、今大会における日本代表の戦いぶりを振り返る。が、執筆にあたり、筆者である私が過去、この競技をとんでもなく誤解していたことを正直に白状したい。ブラインドサッカー、すなわち両目とも失明している人がやるサッカーと初めて聞いた時、私はスイカ割りのようなものを想像してしまっていた。選手がそろりそろりとボールに近づき、蹴って、転がるボールにまた別の選手がそろりそろりと近寄っていくような姿をイメージしていたのだ。しかし11年、震災復興支援チャリティーイベントの場で披露された試合を見た瞬間、その思い込みは私の頭から吹き飛ばされた。彼らはピッチを前後左右に疾走し、文字どおりブラインドタッチで巧みにボールを操り、相手守備陣の隙間をするするとドリブルで駈け抜けていった。その光景を目にし、私は彼らに対して「できない」と勝手に決めつけていたことを、心の底から懺悔(ざんげ)した。彼らは「目を使わない」というルールを加えたサッカーを、誰よりもうまくプレーする卓越したアスリートだ。
神の降臨を待ちながら
回転するダイヤモンド
初戦の中国戦で敗れたことが結果的に最後まで大きく響いてしまった 【写真:田村翔/アフロスポーツ】
日本代表の守備はGKを除く4人のフィールドプレーヤーがひし形に並び、その陣形を細かく修正できる組織力が特徴だ。相手が中央ではなく左右から回り込むように攻めてくれば、サイドにいる選手が頂点となるようにひし形を回転させて素早く陣形を作り替える。この回転するひし形の陣形を、魚住監督は「世界で一番美しいダイヤモンド」と称し、中国、イランに対する防御に自信を深めていた。
果たして日本のダイヤモンドは大会6試合を通じてわずか1失点と、その硬度を存分に発揮した。しかし、わずかな隙を突かれて中国に奪われた1点がチームに重くのしかかる(0−1で敗戦)。得点を挙げた相手選手のマークについていた黒田智成は、「相手の体に触ることはできていた。そこで相手を押しすぎるとファウルを取られる危険があったので、ノーファウルで守ろうと思った。けれど相手は半身の姿勢のまま、つま先でシュートを打ってきた。一瞬のわずかな甘さを突かれてしまった」と、失点シーンを悔しそうに振り返る。中国のシュートは黒田の言うとおり、つま先でゴールの枠をとらえるスーパーゴールだった。