ハリルホジッチ「求める理想はまだ遠い」 W杯アジア予選 カンボジア戦後会見

スポーツナビ

香川に指示を出すハリルホジッチ監督(右) 【写真:ロイター/アフロ】

 サッカー日本代表は3日、埼玉スタジアム2002でカンボジア代表とのワールドカップ(W杯)アジア2次予選兼アジアカップUAE2019予選に臨み、3−0で勝利した。試合開始から猛攻を仕掛けた日本は前半28分に本田圭佑のミドルシュートで先制。後半5分に吉田麻也、同16分にも香川真司が追加点を挙げた。しかし、多くのチャンスをつかみながら3ゴールに終わり、課題が残る内容となった。

 試合後、日本のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「私が選手に求める理想はまだまだ遠い」とコメント。その一方で「チームが伸びるということは確実に言える。どのレベルまで行けるのかを論じるのは難しいが、それでも伸びていくのは間違いない」とチームのポテンシャルを評価した。

 予選初勝利を挙げ、勝ち点を4とした日本は8日、イランでアフガニスタン代表と対戦する。

まだまだ伸びる可能性がある

(今日の試合では)勝利を要求して、そしてわれわれはそれを手にした。選手にはおめでとうと言いたい。彼らも少しプレッシャーを感じていたが、戦う意識はかなりあったと思う。この勝利に関しては、もう少し点は入ったと思う。これだけ大きなチャンスをたくさん作って、3点しか取っていないことにはまだ満足していない。このチームに関しては、もっと効果的なところは向上していくと思う。今日も運がないところがあったが、このようにビッグチャンスを作っていれば、もっと点は取れただろう。

 最後は何人か疲労した選手がいたが、彼らの戦うスピリットは素晴らしいものがあった。ディフェンス面でも素晴らしく、相手は2本の連続パスができなかった。それも含めて、彼らにはおめでとうと言いたい。われわれの攻撃面はもっと伸びていくだろうが、クロスをかなりの回数で上げても、(受け手が)しっかりしたポジションが取れていなかった。その点、まだまだトレーニングが必要だ。今度は移動して2つ目の勝利を獲得しなければならない。これが勝利に続くプロセスとなることを願っている。

──攻撃は斜めにクロスを上げてヘディングでフィニッシュという印象だったが、攻撃のバリエーションという意味ではどれくらいの満足度があるか?

(選手には)いろいろなことを要求した。ミドルシュートも要求して、2点取った。たくさんのことを発展させるために、多くの要求をした。ただ考えてほしいのは、相手はかなり引いていたし、ピッチも(雨で)スリッピーだった。ボールホルダーと要求する人とのコーディネーションも完全ではなかった。武藤(嘉紀)にしても、彼こそこのゲームで活躍してほしかったが、ちょっと早すぎたり遅すぎたりしてタイミングを逸していた。

 ただし、バリエーションがあったことは満足しているし、ミドルシュートも打ってくれた。本当はボランチにも、もっとミドルを打ってほしかった。このチームにはまだまだ伸びる可能性がある。だからこそトレーニングする時間がほしい。ボードで説明するのは簡単だが、グラウンドでトレーニングしていくための時間が必要だ。何人かの選手も疲労していたが、本当に選手たちのスピリットは良かった。選手には6秒から7秒でボールを奪うように指示していたが、彼らは3秒で奪っていた。もっともっと、いろいろなものが伸びていく。どの分野を伸ばす必要があるか、私は完璧に知っているつもりだ。

──合宿期間中に6〜7つの攻撃の解決策を選手に授けたということだが手応えは? またアフガニスタン戦に向けて得点力を高めるためには何が必要だと思うか?

 いろいろな状況によるが、まずアフガニスタンに関してはおそらく引いてくるだろう。今日と同じような状況になるだろうが、私の哲学で何かをもたらして、勝ちに行くことを(選手には)要求する。今日も10〜15のビッグチャンスを作ったが完璧ではない。相手は一度も、われわれの(ペナルティーエリア内)16メートルのところに入っていなかったが、満足していない。厳しく要求するのはいいが、私が選手に求める理想はまだまだ遠い。それでもチームが伸びるということは確実に言える。どのレベルまで行けるのかを論じるのは難しいが、それでも伸びていくのは間違いない。そしてアフガニスタン戦には勝つためにプレーしたい。勝利のスパイラルを続けることで自信がつく。今回のビッグチャンスには、少し慌てたり悪い選択があったりしたのかもしれない。もう少し冷静さがほしい。香川もあと少しの正確さで点が入っていた。それも改善していけると思う。

今夜はネガティブな気分にはなれない

──少し選手はプレッシャーを感じたということだが、それは監督の要求によるものか、それともなかなか勝てないことに対してなのか?

 シンガポール戦のあと、全員が結果をのみ込めていなかった。私に関しては、それを克服する機会を2カ月待たなければならなかった。この夏はシンガポール戦のドローをずっと引きずっていた。選手たちも勝ちたかったからこそ、彼らがボールを奪う気持ちにもそれが表れていた。3秒や4秒でボールを奪っていた。自分自身のリベンジだと彼らも感じていた。全スタッフ、サポーターも含めて、カンボジア戦では素晴らしい雰囲気を作ってくれた。われわれは絶対に勝たなければならなかった。他の選択肢がなかった。そのため選手は、少し慌てて正確さを欠いてのかもしれない。もちろん、もっとゴールを多く決めて勝利することが理想だったが、今夜はネガティブな気分にはなれない。

──W杯を目指す中で、こういう守っているだけの相手と対戦することにストレスを感じるのではないか?(大住良之/フリーランス)

 個人的にストレスは感じていない。とにかく勝ちたかった、それだけだ。そして選手からも本当に勝ちたいという要求があった。そのため、彼らはプレッシャーを感じていた。相手のブロックもかなりあった。われわれが準備したのは、サイドでの三角形を作りなさい、オーバーラップしなさいといったことを要求したが、ちょっと複雑になってしまった。本田についても、逆サイドの武藤についても、他の可能性を与えるために修正した。最後の16メートルのフィニッシュだが、相手が引き過ぎたのにスピードアップが物足りなかった。そしてFW陣が早めに入ってしまって、止まった状態を作ってしまった。

 岡崎、武藤には、ボールが自分から遠いところにある時の動きに注意するように言った。自分で(相手の)チェックをだます動きをして、スペースを作り出しなさいと。2人はだいたい同じラインに入ってしまった。それを時々はマイナスからセンタリングをもらうとか。香川に関しても、2人のFWに対して少し引いた状態になっていた。長谷部と山口にも、マイナスのボールをもらって(ミドルを)打ちに行くように指示を出した。ただ、ものすごい人数が真ん中にいたので難しかったが。

 それと3人目の動きも要求した。だが相手は非常に低いポジションをとっていたので(難しかった)。おそらくアウェーだったら、もう少しスペースが生まれるのではないか。アウェーの方が、スペースから点が取れるかもしれない。開始1秒で、彼らが16メートルの中に閉じこもったのは分かった。今後はFKを改善する必要がある。もっともっと厳しい要求をするが、まだまだ伸びるということだ。

──昨日の会見で、点を取ることで自信を取り戻せると言っていたが、今日3点を取ったことは十分な結果だと思うか?

(少し微笑んで)何人かは満足しているだろうが、満足していない選手もいるだろう。私は勝ったから満足しているが、もっともっと点が取れた。これは批判でなく気付きだ。われわれは、もっと(チームを)向上させたいと思う。そして選手もチームも、ビッグチャンスを作り続けることが大事だ。そしてフィニッシュについては、まだまだハイレベルなところまでいっていないが、それは改善できると思う。

──早い攻撃を一貫して志向していて、引いた相手にもそうしようとしているが、日本はこれまで引いた相手に対してはゆっくりしたパス回しを志向してきた。監督はあくまでも高いレベルでの早いパス回しを要求し続けるのか?(田村修一/フリーランス)

 まずはゴールするためのポジションをとる。引いてきた相手に対して、一番いいのはサイドからの攻撃だ。そして中央のコンビネーションはワンタッチで行くのが理想だ。2〜3回のパスをコントロールなしで続けること。もしくはミドルシュート。今日はこれだけのセンタリングを上げて、合わせるところが足りなかった。われわれはFKからセンタリングして、それが唯一成功した。これから映像をしっかり用意して、センタリングにどう合わせるか、ということを戦略的にゾーンを埋めていく。同じラインにならないように動きながら、すべてを伸ばしていく必要がある。われわれより力の劣る相手が、低いブロックできたときに点を取るというのは、全世界的に考えても難しい。われわれもすぐにプレッシャーをかけにいったし、本田にも要求した。武藤を中に、香川を外に置いて相手を困らせることにもチャレンジした。

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