“挑戦者”敦賀気比が挑む春夏連覇 活力になった優勝からの「切り替え」

沢井史

センバツ後も貫いた普段通りのスタンス

1日には甲子園見学に臨んだ敦賀気比ナイン。春夏連覇へ向けて浮かれた様子は見られない 【写真は共同】

 北陸勢初の全国優勝を果たしたセンバツから約4カ月経った夏の地方大会。決勝戦で福井工大福井高との息詰まる投手戦を制し、夏の甲子園切符を手にした敦賀気比高が、18年ぶりに春夏連続で甲子園に帰ってくる。

 今春はエース平沼翔太が全5試合を完投し、松本哲幣が準決勝で2打席連続満塁ホームラン、決勝戦は試合を決める2ランを放つなど力と勢いが融合し、あまりにもドラマチックな幕切れとなった。

 敦賀への帰郷後は、とにかくチームは注目の的だった。決勝の翌日に学校に凱旋(がいせん)した際は、多くの地元のファンに出迎えられ、直後に行われた大会でも球場のスタンドは常に多くの観客が詰め掛けた。ある程度覚悟していたとはいえ、想像以上の状況に選手たちは戸惑いを隠せなかった。それでもチームは休む間もなく練習を開始。あいさつ回りや表敬訪問の合間にも、練習をしっかりこなし、普段通りのスタンスを貫いてきた。

目に見えないプレッシャー

 5月に学校からほど近い敦賀市総合運動公園野球場で、春の福井大会の準決勝が行われた時だった。ゴールデンウイークということもあり、春の王者の戦いぶりを見ようと多くの観衆が押し寄せた。センバツ決勝戦以降、初登板となるエース平沼がマウンドに立ち、さらに熱い視線がマウンドに集まった。相手は昨夏の県大会の準決勝で苦戦を強いられた啓新高。試合は4−2で敦賀気比が勝利したが、平沼が痛感したことがある。

「投げても抑えて当然、試合をしても勝って当然という目で見られる。精神的にキツかった」

 実は当時、センバツからまだ1カ月ということもあり、平沼はほとんど投げ込みをしないまま登板していたのだ。初回こそ3者凡退に抑えていたものの、4回以降は走者を背負いながらの苦しいピッチング。完投はしたが、終盤には四死球でピンチを招いてタイムリーを許し、追い上げられた試合だった。センバツで見せた自分とは程遠い内容だったが、スタンドはそんなことは知る由もない。「どうしてこんな接戦なの?」という空気が、球場内には漂っていた。王者ならではの宿命と言えばそれまでだが、目に見えないプレッシャーが選手たちの背中にのしかかっていたのは確かだ。

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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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