東海大相模・小笠原に見た大器の片りん 荒木大輔氏「素材は間違いない」

週刊ベースボールONLINE

右腕・吉田とともにチームを引っ張る小笠原。甲子園ではどのような投球を見せるか ? 【写真=BBM】

 第97回全国高等学校野球選手権大会は出場49代表校が決定し、3日には組み合わせ抽選会が行われる。高校3年生の有力選手にとっては、スカウトにアピールする最後の場。もちろんチームの勝利に徹することが評価につながってくる。今回は西武、ヤクルトで指導実績を積んだ荒木大輔氏に、高校生ナンバー1左腕の呼び声高い、東海大相模高・小笠原慎之介について、鋭く斬り込んでもらった。

自分で課題に気づき修正できる左腕

 高校生サウスポーで「ドラフト上位候補」とうわさの東海大相模・小笠原投手を見た。チームメートでこちらもドラフト上位候補のMAX151キロ右腕・吉田凌と切磋琢磨(せっさたくま)し、背番号1を任されるのだから相当の実力者だ。取材に訪れた7月21日の神奈川大会4回戦では、石井貴氏(元西武)が非常勤コーチとして携わる藤嶺藤沢高が相手。小笠原は住吉高との3回戦での救援登板を経て、今夏初先発のマウンドであった。

 その立ち上がりに注目していたが、フォームが気になった。体全体を使えていないのだ。簡単に説明すると、投げ終わった際に軸足(左)が前へ出てこない。つまり、体重がうまく乗らず、上半身主導となっていたのだ。もう一歩、押し込めない影響から、右打者の内角に狙ったボールがやや内に入ってしまう。また、左打者にはボールが抜けてしまい、死球を与える場面も見られた。

 ところが、5回を境に人が変わった。ネット裏のスカウトのスピードガンによれば、最速147キロと、良いボールを投げていた。東海大相模高・門馬敬治監督は試合後に「見ている人が見れば分かると思いますが、(小笠原は)自分でコントロールしていた。ゲームの中で修正できたのは収穫」と明かしている。つまり、相手を見て投げていたのだ。本人も「右打者の内角に投げ切れなかったことが反省。ボール1個、中に入っていた」と、試合中から課題に気づいていたという。

変化球とクロスファイアーを磨いてレベルアップを

7月21日に行われた神奈川大会4回戦の藤嶺藤沢高戦を取材した荒木氏 【写真=BBM】

 中盤以降は軸足で立ち、左足を着地するフォロースルーまでの体重移動がスムーズになり、何よりフィニッシュで左足が飛び跳ねていた。序盤までとは異なる躍動感があったわけだ。試運転から尻上がりに状態を上げ、トップギアに入る。大器の片りんを見た。

 7回無失点(試合はコールド勝ち)のこの日は12奪三振と、結果的に相手を圧倒したものの、プロで即通用するかと言えば、そう簡単な世界ではない。高校生レベルでは、回転の良いストレートで空振りを取れるが、変化球の精度を高める必要がある。桐光学園高時代の松井裕樹(現東北楽天)のような決め球はないのが現状。カーブで確実にカウントを取れるようになれば、投球の幅は広がる。スライダー、チェンジアップ、ツーシームを投げていたが、やや腕の振りが緩んでいた。これは、日ごろからの投げ込みによって解消される分野だ。

 あとは、本人も課題として口にしていたように、左投手の特性であるクロスファイアーを磨いてほしい。東京ヤクルトで指導した赤川克紀、日高亮(現・福岡ソフトバンク)もそうだったが、この意識を植え付けることで投球は劇的に変わる。マウンドでの立ち居振る舞いも堂々としており、素材は間違いない。獲得した球団は体作りと並行し、2軍戦で週1回の先発登板機会を重ねることで、レベルアップを図らせたい。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

新着記事

スポーツナビからのお知らせ

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント