ネット際の駆け引きと効果率に注目 バレーボールの観戦力を高めるポイント2

田中夕子

攻撃パターンを増やし、相手を迷わせる

モントルーバレーマスターズ決勝トルコ戦に出場した全日本女子メンバー 【スポーツナビ】

Q:攻守の駆け引きで一番ポイントになるのはどんなところですか?

A:ブロック枚数は最大で3枚。スパイクを決めやすくするために、いかに相手のブロック枚数を減らすかを考えます。そのために各ローテーションで少しでも攻撃パターンを増やし、「数的優位」を作り出す駆け引きを繰り広げる。それこそがバレーボールの醍醐味(だいごみ)です。

 攻撃枚数を増やすうえで、大きな役割を占めるのが(バックオーダーの場合)ポジション3、6に入る選手(上図を参照)です。従来「ミドルブロッカー」と呼ばれるように、ブロックの要であり、スピードを生かした攻撃を仕掛ける選手でもあります。

 ポジション3か6、入る位置によっても求められる役割は異なります。セッターから遠い位置、ポジション3に入る選手は前衛にいる3ローテのうち、2回は(セッターが後衛にいるため)前衛の攻撃枚数が3枚になります。つまり、レフトの選手はレフトから、ライトの選手はライトから攻撃に入ることが多いため、ポジション3の選手はセッターに近い位置からのA、B、Cクイックを得意とする選手が多い。

 反対に、セッターの隣に入るポジション6の選手は、3ローテのうち2回はセッターが前衛にいるため、攻撃枚数は2枚になります。セッターはトスを上げる際、ネットの中央近くに構えますので、ポジション6の選手はライトへ走るブロード攻撃や、ライトへ開いてスパイクが打てるなど、空いたスペースをうまく利用して攻撃できる選手が多い傾向があります。

 なぜこのような違いが生じるか。それは、相手ブロッカーにより多くの選択肢を与え、自チームの攻撃を絞られないようにするためです。攻撃側からすればブロッカーが少ないほうがスパイクを打てるコースも広がるので、できるだけ相手ブロックの枚数を減らしたい。もちろんセッターがどのスパイカーを使うか、という戦術や技術もありますが、アタッカーが3か所、さらには後衛のバックアタックも含めて4か所から一斉に攻撃してくれば、ブロッカーは迷いが生まれ、その分動きがワンテンポ遅くなります。

 両サイドの選手に対しては、サイドブロッカーがマークしていますので、ポイントはミドルの位置でブロックに跳ぶ選手をどう動かすか。攻撃パターンが増えれば増えるほど絞れなくなるので、攻撃側にとって「数的優位」を生み出す。それこそが、まさに狙いとする状況なのです。

 守備も同様。ブロックをする際もやはり、いかに「数的優位」の状況を作るか。それが大きなポイントです。

ネット際の攻防がバレーボールの醍醐味

攻撃パターンを増やし、「数的優位」を作り出す駆け引きを繰り広げる。バレーボールの醍醐味だと語る川北コーチ 【スポーツナビ】

 ブロックには、相手がトスを上げた瞬間に相手のアタッカーに合わせて跳ぶ「リードブロック」と、相手のトスが上がる前にアタッカーの動きを予測して跳ぶ「コミットブロック」、前衛の3人が中央に集まり「束」となって相手の攻撃に備える「バンチブロック」、トスが上がる前から中央に1人、両サイドに1人ずつを分けて配置する「スプレッドブロック」などそれぞれの状況に対応するため、いくつかの種類があります。

 たとえばバンチブロックの場合、センターからの攻撃に対しては3枚のブロックが対応できるので、1人のスパイカーに対して1対3の状況が作れる。さらに、中央で跳ぶ選手が左右をカバーできるので、サイドの選手に対しても1対2と優位な状況になります。加えて、サイドからの攻撃が少なく、バックアタックが多いチームに対しては中央で3枚がそろって対応することで1対3の状況を作ることが可能になります。

 攻撃側は少しでもブロック枚数を減らそうと考える。状況を打開するため、トスを速くして、ブロッカーが準備できないうちに攻撃をしかけたいと考えるようになります。それまでは中央に3枚のブロッカーがそろっていますから、サイドのスピードが速くなれば対応できず、スパイクが決まるかもしれない。攻撃側からすれば、相手の裏をかいた戦術なのですが、そうなれば当然、ブロック側は次の手を打つ。

 中央に集まってから移動するバンチブロックではスピードのある攻撃への対応が難しいと感じれば、今度は両サイドの速い攻撃を確実に仕留めるためにスプレッドで対抗する。このような攻防が短い間に毎回繰り返されています。

 相手の攻撃に対して策を練り、相手もそのブロックに対してどんな攻撃を展開するかをその都度考える。これこそがネット際で繰り広げられているバレーボールの戦術であり、バレーボールの醍醐味です。

今までとは少し違う見方で「なぜ」を持つ

 なぜこの位置にこの選手を配置するのか。どんな組み合わせで選手を使っているのか。その時の攻撃パターンや、相手の対応は、といったように、見方を変えればいくつもの発想が広がり、そこには必ず理由が存在する。

 点が入った、スパイクが決まった、この選手がたくさん点を取ったらしい、と一面だけで見るよりも、きっとより多くの「なぜ」を持てば持つほど、それまでは気付かなかったバレーボールの楽しみ方に触れることができるはずだ。

 今夏にはワールドグランプリ、ワールドカップが開催される。今までとは少し違う見方で、バレーボールを存分に味わい、楽しんでほしい。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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