鈴木彩香と山口真理恵、それぞれの戦い 女子ラグビーを引っ張ってきた2人の今

斉藤健仁

女子ラグビー界の司令塔とエース

女子ラグビー界の先頭を走ってきた鈴木彩香(左)と山口真理恵。(写真は高校生時代) 【斉藤健仁】

 2016年のリオデジャネイロオリンピックから正式競技となった7人制ラグビー(セブンズ)。男女ともにアジア予選を11月に控え、「サクラセブンズ」の愛称でも知られる女子セブンズ日本代表は、男子のようにスコッド(代表候補)こそ発表しないが、時間の許す限り遠征と合宿を繰り返している。

 その女子ラグビー界の先頭をこの10年近くにわたって走ってきた2人。それが鈴木彩香と山口真理恵だ。鈴木はパスとランが得意でスペース感覚に優れた司令塔として、山口は決定力のあるスピードランナーとして活躍し続けてきた。

幼なじみの2人がともに日本代表に

高校生の頃から日本代表として活躍してきた2人 【斉藤健仁】

 2007年3月、ともに高校2年生の17歳で、香港で行われたセブンズの大会で初めて日本代表選手として桜のジャージに袖を通した。当時、「ジャージの重みを感じた」(鈴木)、「うれしくて泣いてしまいました」(山口)と語っていた2人は、今年で26歳を迎えようとしている。
 実は、この2人は神奈川県横浜市の汐入小、寛政中の同級生という幼なじみで、小学校の頃、タグラグビーを始めた。教えたのは鈴木雅夫氏だった。消防士で、現在も非番の日に小学生にタグラグビーを教え続けている一角の人物だ。2人だけでなく娘の鈴木陽子、そして鈴木実沙紀、小出深冬といった日本代表選手は鈴木氏の教え子。「彩香は出られませんでしたが、3月の香港の大会で決勝に進出し、4人が香港スタジアムの舞台に立った姿を見たときは涙が出ましたね」(鈴木氏)

 そんな2人が初めてセブンズのワールドカップに出場した2009年、男女のセブンズが2016年からオリンピックの正式競技になり、環境が大きく変わった。高校生や大学生といった若手や他競技からの転向組の台頭が激しくなり、遠征や合宿の回数も目に見えて増えた。昔の女子ラグビーを知る2人は「今の若い選手たちがうらやましい」と振り返る。一方で女子ラグビーのレベルは年々上がり、2人も日本代表として定位置が保証されている状況ではなくなっていた。

スタイルの変更を求められる山口

高校卒業後はオーストラリアでもプレーした山口真理恵 【斉藤健仁】

 高校時代から海外志向の強かった山口は、高校卒業後の2009年から2年間、ヤマハ発動機スポーツ振興財団の援助を受けてオーストラリアに留学。NSW(ニューサウスウェールズ)州の代表にも選出され、オーストラリア国内で2度優勝を経験するなど、飛躍を遂げた。日本に帰国後すぐはケガの影響で調子を落としていたが、その後、7人制はもちろんのこと15人制でもエースWTBとしてグラウンドを駆け抜けてきた。

 だが、山口は今年3月に香港で行われた大会や4月の東京セブンズで行われたオランダ代表との試合、5〜6月の欧州遠征では、決してエースとしての輝きを十分に見せることはできなかった。海外の大きく速い相手には、やはり一人のスピードだけで抜くことは難しい。接点で体を張ることや、しっかりと味方と連携するなどチームとして戦うことも求められている。

 かつて、2人とともに戦っていた「サクラセブンズ」の浅見敬子ヘッドコーチ(HC)も言う。「チームとして山口さんにボールを回せないこともありますが、彼女もスタイルを変えないといけないことはわかっている。欧州遠征のMVPだった谷口(令子)さんのようなWTBも出てきました。山口さんも決して体を張れないわけではない。チームのプレーにどう関わっていくか、正念場です」

 それは本人も自覚している。「嫌ですが良い年になってきましたね(苦笑)。多少の責任はあると思います。欧州遠征ではできることはしたつもりですが、まだ改善することもあります。ケガを良い状態に戻して、良いプレーをしたい」

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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