自分しか出せない強さが生み出す価値=パンクラス酒井社長×鈴木みのる第2弾
パンクラス酒井社長と同団体の創設者であるみのるがパンクラスを語る対談第2弾 【田栗かおる】
前回は2人の出会い、みのるがパンクラスを創設したときの苦労話、酒井社長がパンクラス社長を請け負った想いなどを話してもらった。今回はスタイリッシュなロゴがなぜ生まれたか、みのると酒井社長が考えるプロとは何か。そして、2人のトークが盛り上がる中、最後にみのるが酒井社長に、そしてパンクラスへ送った熱きメッセージとは!?
(取材日は3月15日・ディファ有明/インタビュアーはパンクラス創立時から取材をしているスポーツライター布施鋼治)
血を混ぜると黒になることを表現
赤と黒のロゴは、すべての血を混ぜると黒になるという思いが込められ、それが「ハイブリッド・レスリング」というスローガンにつながっている 【田栗かおる】
みのる ぶっちゃけ僕はキャリア27年ですからね。パンクラス作ったとき、僕はたかだかプロレスのキャリアも5年しかなかったですからね。25歳で。今から考えたらあのエネルギーって何だったんだろうと本当思いますね。
――でも尖ってましたよね。
みのる すべての人をぶっ飛ばせると思ってました。もちろん今も思っているんですけど(笑)。当時は何も持っていない状態なのに、強い意志はあのときの全員にありましたね。まだデビューしていなかった稲垣(克臣)と国奥(麒樹真)はついてくるだけでしたけど、船木(誠勝)、オレ、富宅(飛駈)、高橋(義生)、柳澤(龍志)と最初に選手だった5人は本当に強い意志でやりましたね。
途中、全員離れ離れになって、僕と船木はプロレス界で再会して血だらけになって殴り合って。なんか何で憎しみあってたのか分からなくなっちゃって……。今日も会場に来るんですよね(地上波で行われるパンクラスの番組のナビゲーターを務める船木がこの日のパンクラス興行に番宣のために来場)。いいことですよ、はい(しみじみと)。
――そういう流れをみて酒井さんはどうですか?
酒井 あらためて身が引き締まりますよね。やっぱりパンクラスを作った創業者なんですよね、鈴木さんは。
みのる ちなみにロゴの意味を知っていますか? すべての形に意味があるって知ってます?
僕らとコピーライターとイラストレーターとずっと話をして、何度もダメ出しして。いろいろ出てきたうちのひとつにこれがあったんですよ。作った人は新会社のロゴでバツはないだろうと思って一度ボツにしたらしいんです。でも、「絶対ボツだと思いますけど、実は一番最初に浮かんだのがこれなんです」といって出してきたんです。
ようは赤は血液なんですよ。交わるって意味で、すべての血を混ぜると黒になるっていう思いがすべてこの中に入っていて。それで『ハイブリッド』というコピーをつけてもらったんですよ。
――旗揚げのときに21世紀のプロレスということを言ったじゃないですか? 21年後、21世紀のプロレスとしてどうですか?
みのる うーん、プロレスはプロレスだよね。プロレスはプロレスで、完全に違うものというのも分かったけど……。だけど、僕らが作ったというのは町道場で育って作った団体ではないということがひとつですね。僕らはプロとしてリングに上がる、商品として僕らは生まれ育っているので。その人間たちが作ったから明らかな違いがよそとあるはずなんですね。
――その自負はありますか?
みのる ありますよ。
お金を払う価値のある選手とは!?
みのるとともにパンクラス創設者の一人である船木誠勝。テレビ東京の番組でナビゲーターを務める 【田栗かおる】
みのる どう? どうもこうも頑張っていますよ(笑)。僕は「パイルドライバー」というグッズのショップをやっているんですけど、ぶっちゃけ2人とも僕の契約選手なので(笑)。選手は弟分なんですね、全員。それで彼らをちょっとでもサポートできたらと思って、現在は近藤(有己空)、伊藤、川村と新しく契約した砂辺の4人ですね。微々たるもんですけどサポートさせてもらっています。
――その4名は酒井さんから見てどうですか?
酒井 ハイブリッドじゃないですか。特に今、砂辺選手は本当に注目しています。彼は面白いと思うんですよ。彼はいろいろなことが良く分かっています。先輩たちを見ています、研究しています。今後どんどんパンクラスが進化していくうえで、彼の存在は大きいと思いますよ。彼が今後のパンクラスの指針のひとつになるのは間違いないですね。
みのる アメリカの選手ってこういうインタビューとか、公開計量とか特別違う感じがしませんか? あれはショービジネスが発展しているアメリカだから当たり前のように自分がそうするべきだと思ってやっているんですよ。でも日本はショービジネスがまだ低いので、その中で力だけでのし上がっていく選手はやっぱり自分が表現しきれていないのがすごいあるんですよ。
――言いたいことが言葉で表現できないということですか?
みのる 戦うことがもちろん一番大事なことなんですけど、戦うことしかできないんですよ。
――プロとしてのプラスアルファがほしいですね。
みのる そうです。もし、僕がお金を払うお客さんだったとすると、すごく強いやつ、すごくかっこいいやつ、すごく好きなやつ、弱いけど何かすごく応援したくなるやつ、何か飛び抜けている人間にしかお金を払いたくないんですよ。それで、僕は満足するために5千円とか、1万円とか払うのであって。失礼な言い方ですけど、ここに引っかからない、その他大勢という選手が非常に多いです。強くてお金をもらうんだったら一番強くならなかったらお金にならないです。みんなと同じ格好良さだったら1円にもならないと思っています。それを自分自身もずっと追及しているので。
同じ格好良さでいったら僕はジャニーズのタレントに負けるかもしれないけど、絶対ジャニーズのタレントよりも俺のほうが格好いい瞬間を自分で出せると思ってるんです。強いという部分でも、日本の総合格闘技のチャンピオンや日本のオリンピック種目のチャンピオンも含めて世界の人の中で、自分しか出せない強さが必ずあると思っています。それを出せる瞬間があるので、そこにみんなはオレにお金を払ってくれていると思っています。その気持ちというのは、ismの選手なんかには僕の知っている範囲で「お前は金にならないよ」「お前は金になるからそこを伸ばしなさい」って言っていて。
選手の育て方もあるじゃないですか。昔、パンクラスが広尾と横浜に道場が2つに分かれたときに真っ先に目をつけたのはそこなんですよ。マイナス要因を埋めない、長所だけを伸ばせばいいよって。寝たら棒切れでも、寝なければいいんだからって。一発で倒せる打撃を身に付ければいいんだからって。そうじゃないと面白くないですよ。デコボコのほうが面白いんですよ。じゃなかったお金払わないです。