宇野、佳菜子を襲った「意外なワナ」 フィギュアのルール改正が残した影響
「2回転は2度まで」の思わぬ落とし穴
NHK杯では村上佳菜子が、ジャンプの規定違反で高得点となるはずの3連続ジャンプが0点に 【Getty Images Sport】
このルールが導入されたきっかけは、「2回転までしか跳べない選手のなかに、得意の種類の2回転ばかり何本も入れて偏ったプログラムになる人が多い。3回転だけが規制されるのは不平等」という意見があったためだ。つまり2回転ジャンプ級の選手を想定してできた規制だった。
ところがふたを開けてみると、3回転を跳ぶ選手にとって「意外なワナ」になっていたのだ。
村上佳菜子(中京大)は11月のNHK杯の女子フリーで、後半に入れた「3回転サルコウ+2回転ループ+2回転ループ」の連続ジャンプで、2回転ループが中盤に跳んだ1回と合計して3回となる規定違反だったために、この連続ジャンプまるごと0点に。約10点を不意に失った村上は、「もう(私は)終わっちゃった」と思わずこぼした。
宇野「あれが0点だったら笑えない」
世界ジュニアで初優勝の宇野はジャンプの規定違反を何とか回避。演技後はほっとした様子だった 【坂本清】
宇野は、冒頭の4回転トウループが、2回転半回って降りてしまうというミスをした。これが「2回転」と「3回転のダウングレード」のどちらに判定されたかは、審判団のコンピューターには表示されるものの、選手やコーチ、観客からは試合が終わるまで分からない。宇野は判断に迷った。
2回転と判定されていれば後半の「3回転フリップからの連続ジャンプ」を「3回転+3回転」にしなければならない。3回転と判定されているなら「3回転+2回転」にしなければならない。
コーチの樋口美穂子の目でも判断がつかず、リンクサイドから叫んで指示を出すことができない。宇野は「たぶん3回転のダウングレード」と決め、後半のジャンプ構成を考えて跳んだ。
結果的に、宇野の勘があたり、ジャンプの規定違反はなし。2位のボーヤン・ジン(中国)を2.84点差でかわし、初出場から4年越しの優勝を飾った。
「あのフリップが0点だったら優勝していない。4年かけて優勝を目指して、まさか規定違反なんてあったら、笑えないですよ」
悲願の優勝にも、笑顔というより、ほっとした様子だった宇野。ヒヤリとさせられる試合だった。
また、世界選手権でもミハル・ブレジナ(チェコ)やセルゲイ・ボロノフ(ロシア)らトップ選手が同ルールの影響で順位を落とす悲劇があった。
もちろんこの規定は今季が運用の初年度。さすがに混乱が多いという声も多い。国際スケート連盟関係者によると、緩和の方向性もあるという。