高阪剛氏が語るUFC女子頂上対決 ロンダvs.ジンガーノ王座戦展望

WOWOW

最強の挑戦者ジンガーノを迎え撃つUFC女子バンタム級王者ロンダ・ラウジー 【(C)Photo Courtesy of UFC】

 現地時間2月28日に米国カリフォルニア州ロサンゼルス、ステープルス・センターで行われる「UFC184」(3月1日午後0:00〜WOWOWライブで生中継)。メインイベントは、王者ロンダ・ラウジーがキャット・ジンガーノの挑戦を受けるUFC女子バンタム級タイトルマッチだ。

 ロンダはここまでMMA10戦全勝。UFC女子バンタム級王座も4連続防衛中と、最強女王の名をほしいままにしているが、ジンガーノもMMA9戦全勝で、ロンダのライバル、ミーシャ・テイトにもTKO勝ちしている最強のチャレンジャー。まさに“女子頂上対決”と呼ぶに相応しい一戦だろう。

 また、頸椎ヘルニアの治療で長期欠場中だった山本“KID”徳郁が3年ぶりの復帰戦を行う。この大会の見どころを、今回もまたWOWOW『UFC−究極格闘技』解説者、高阪剛氏に語ってもらった。

ロンダの序盤の攻めをどこまで凌げるか

ロンダの序盤の攻めを凌ぎ後半に勝負をかけたいジンガーノ 【(C)Photo Courtesy of UFC】

――「UFC184」のメインイベントは、ロンダ・ラウジーvs.キャット・ジンガーノのUFC女子バンタム級タイトルマッチが行われます。女子の頂上対決と言われるカードですが、この一戦、高阪さんはどう見ていますか?

 ロンダとジンガーノはMMA全勝のトップファイター同士ですけど、まったくタイプの違う選手なんですよね。まず、大雑把に言うと、ジンガーノはスタートダッシュはそれほど早くないんだけど、スタミナがあって、後半になればなるほど伸びてくるタイプ。序盤攻め込まれたとしても、チャンスが来るまで我慢して、後半に勝負ができる、そういうスタミナと我慢強さを持っているんですよ。

――前回のアマンダ・ヌニーズ戦(14年9月27日「UFC178」)も、その前のミーシャ・テイト戦(13年4月13日「TUF17 Finale」)も3ラウンドに逆転勝ちでしたもんね。

 対するロンダは、ご存知のとおり、初っぱなから一気に攻撃を仕掛けてきて、ずっと攻撃しっぱなしにできる選手なんですよ。きっと相手に攻めさせたくないんでしょうね。攻撃をし続けることが、ロンダにとっては、“安心できる状態”なんだと思います。そして、一気に相手を仕留めてしまうという。

――ロンダが攻め疲れする前に、みんなあの爆発力に飲み込まれてしまってますよね。

 だから、この試合もジンガーノが、ロンダの攻撃をどこまで我慢できるか、そこに尽きると思うんですよ。

――開始早々からの怒とうの攻めを凌がれたあとのロンダ・ラウジーというのも、未知数ですからね。

 そういう意味では、長期戦になったときにロンダの潜在能力が現れるかもしれないし、1、2ラウンドを凌がれて、後半ジンガーノの方に試合が傾いていくようであれば、さすがのロンダも手足が出なくなってしまうんじゃないか、とも思いますね。

――あの爆発力をフルラウンド続けるというのは、さすがに難しいでしょうからね。

 しかも、メインイベントのタイトルマッチですから、5ラウンド制なんですよね。そうなると、恐らく2ラウンド終了までジンガーノが凌いだら、5ラウンドまでいくんじゃないかと思うんですよ。そして、ジンガーノ陣営としては、そこに持ち込みたいでしょうね。1、2ラウンドは凌ぐことだけを考えて、3〜5ラウンドを獲りにいき判定勝ちを視野に入れながら、最終ラウンドに勝負を懸けるとか。どちらにしても、前半を我慢されたら、ラウンドが進めば進むほど、ロンダは苦しくなっていくでしょうね。

――そうなると、4〜5ラウンドまでもつれるようなことになれば、初めて守勢に回るロンダ・ラウジーが見られるかもしれない、と。

 そうですね。これまでロンダは最高で3ラウンドまでしかいってないと思うんですよ。

――ミーシャ・テイトとの再戦が3ラウンドまでいっただけで(3R0分58秒、腕ひしぎ十字固めで勝利)、あとはすべて1ラウンドで勝ってますからね。

 また、ロンダの攻撃を凌いで、長期戦に持ち込む力をジンガーノは持っていると思うんです。打撃に関していうと、ジンガーノは構えがサウスポーでロンダはオーソドックスなんで、喧嘩四つになるんですけど、ジンガーノは喧嘩四つの相手に、左ストレートをしっかり真ん中に打つのがすごくうまいんです。だから、まずスタンドの状態では、左ストレートをメインの武器にして、近づいてきたところで、首相撲からヒザ蹴りというのも考えられますね。ジンガーノは後半でもヒザが上がっていきますから。

――ジンガーノのヒザ蹴りがまた強烈なんですよね。

 ミーシャとの試合では、最終的にヒザ蹴りで戦闘不能にさせてましたからね。あれが確か3ラウンド目だったと思いますけど、普通3ラウンドくらいになると、ヒザが上がんなくなるんですよ。それがしっかりできるということは、それだけのスタミナがあるってことだろうし、そういった闘い方をされたら、ロンダも苦しい展開を強いられるんじゃないかな。……ただ、とは言え、ロンダですからね(笑)。

――言うほど簡単なことじゃない(笑)。

 ロンダはボクシングの技術もありますし。前回のアレクシス・デイビス戦では、開始早々にジャブをもらったんですけど、もらったことでよけいに火がついて、あっという間に倒して、袈裟固めからのパウンドで試合を決めてしまいましたからね(笑)。

――「あんた、アタイの顔に触ったね!?」って感じで(笑)。

 だから、気持ちの強さと技術力というのが、最近また増して来てるというか。技術が高まるにつれて、もともと強かった気持ちがさらに強くなってる気もしますよね。

ロンダvsジンガーノは女子MMA自体を牽引する試合になる

――では、ジンガーノが1〜2ラウンドを凌げば光明が見えてくるけれども、本当にそれができるのかが、ポイントということですね。

 そうですね。ジンガーノは低く入るタックルもできるし、ケージに押し込んでのテイクダウンもうまい。また、差し合いの強さも持っているんで、さっきも言ったとおり、ロンダとやり合うだけの力は持っていると思うんですよ。ただ、ロンダの展開の早さ、切り替えの早さについていけるかですね。ロンダは差し込まれても、すぐ投げに切り替えるし、それを切られても、すぐ打撃に移行したり、そういう展開作りがロンダはうまいので。それを全局面でしのぐのは厳しいですけど、ジンガーノの突破口があるとしたら、凌いで長期戦に持ち込むことかなって思いますね。

――あと、ロンダの強さにつても、もう少しうかがいたいんですけど。柔道出身の高阪さんから見て、ロンダはなぜあれほど柔道をMMAにアジャストできるんだと思いますか?

 ロンダの大きな武器と言えば投げですけど、打撃の構えはオーソドックスなのに左投げなんですよね。だから、もしかしたら右利きなのを、左の組み手に矯正した選手なんじゃないかと思うんですよ。で、オーソドックスの構えで左投げができるというのはどういうことかと言うと、要は打撃の構えのまま、すんなり投げに移行できるんです。そこが一つ、ポイントだと思いますね。

――なるほど。一歩踏み込まず、そのまま投げられる、と。

 そうなんです。打撃と組み技の境目に無駄な時間がないので、それで相手が困惑してしまうんですよ。

――対応が遅れてしまうわけですね。

 相手は「ここで投げが来るか」っていうタイミングで投げられてるはずなんですよね。だから、ジンガーノとしては、四つに差しにいったらそのまま投げられますから、低いタックルでいくか、上から首相撲を取りにいくのが有効じゃないかと思います。おそらく、それはジンガーノ陣営もわかっていると思うので、あとは徹底的に練ったロンダ対策を、本人がどこまで実践できるかにかかってますよね。もちろん、それは大変な作業ですけど、ロンダ・ラウジーはそれだけの実力も実績もありますから。

――ホント、男の選手も含めて、UFCの中でも特別なファイターですもんね。今回も「UFC184」も、ロンダのタイトル戦一枚看板で開催されるようなもんですし。

 これはすごいことだと思いますよ。ジョシュ・コスチェックvs.ジェイク・エレンバーガーのような好カードが、ロンダのメインをもり立てるためにあるような感じにすら、なりそうですからね(笑)。

――もともと、当日はUFCミドル級タイトルマッチも組まれていたのが、クリス・ワイドマンの負傷欠場でなくなりましたけど、ロンダのタイトル戦があるから、代替カードも組まれませんでしたもんね。

 メインのタイトル戦が飛んだら、大会自体が延期や中止になることすらあるのに、「ロンダがいるから大丈夫」と判断されたんでしょうからね。UFC側としては、そこまで信頼感があるということでしょう。

――そしてキャット・ジンガーノというのは、そのロンダにとっても最強のチャレンジャーですから、この頂上対決は、女子MMAがもうワンランク上に行くような試合を期待したいですね。

 そうですね。その次の大会では、52.2kg以下の階級もスタートするんですよね?

――はい。3月15日(日本時間)の「UFC 185」では、女子ストロー級の初代王者決定戦が行なわれますね。

 新設されるストロー級っていうのは、日本人選手やアジアの選手も入りやすい階級だと思うので、これからUFCの女子というのは、日本人にとっても身近なものになるだろうし。今度のロンダvs.ジンガーノは、女子MMA自体を牽引するような試合に期待したいですね。

KID本来の暴れっぷりを見せてほしい

――また、「UFC184」では山本“KID”徳郁選手が3年ぶりに復帰します。

 自分は、相手選手の試合映像がまだ観れてないんですけど、ノリに関しては、相手がどうのこうのより、とにかく目一杯暴れてほしいですね。今回はバンタム級ということで、無理な減量はしないで上がることになると思うし、これまで貯め込んだエネルギーを爆発させてほしいです。

――KID選手本来の暴れっぷりを見せてほしい、と。

 そこに尽きますよね。これまでUFCでのノリは、ケガも影響してるのか、いいタックルを持っているのに、「タックルにいくぞ」っていうタックルになっていたんですよ。

――相手に読まれてしまうタックルになっていた。

 でも、本来は打撃のフェイントからタックルに入ったり、逆にタックルのフェイントから、前手のフックを当てたりするのが、すごくうまいんですよ。ノリのあの前手のフックというのは、相手を倒す力もありますしね。だから、それを軸に試合を組み立てて、暴れてくれたらいいと思います。

――KID選手もケガが癒えて、コンディションも近年になくいいらしいですしね。また、愛弟子である堀口恭司選手もフライ級タイトルへの挑戦が決まって、チーム自体がいい状態ですしね。

 だから、そうやって周りが充実してきたら、やっぱり気合いも入るだろうし。ノリは生物としての強さを試合で見せられる数少ない選手ですから、頑張ってほしいなと思います。

――乗ったら、恐ろしく強い選手ですしね。

 一個爆発したら、手を付けられなくなる選手ですから。そこは、試合間隔が空こうが、もともと持っているものですから。期待したいですね。

(取材・文/堀江ガンツ)

◆◆◆ WOWOW番組情報 ◆◆◆

★生中継!UFC−究極格闘技− UFC184 最強女王ロンダ・ラウジー&山本KID参戦!

山本“KID”徳郁ガ3年ぶりに復活するUFC184。メインイベントは最強女王、ロンダ・ラウジーが最強挑戦者キャット・ジンガーノとの防衛戦!
3月1日(日)午後0:00〜[WOWOWライブ]※生中継
ゲスト解説:水垣偉弥(UFCファイター)

<主な対戦カード>
女子バンタム級タイトルマッチ:ロンダ・ラウジーvs.キャット・ジンガーノ
女子バンタム級:ラケル・ペニントンvs.ホーリー・ホルム
バンタム級:ローマン・サラザールvs.山本“KID”徳郁

★生中継!UFC−究極格闘技− UFC185 SHOWTIMEペティス、2度目の防衛戦

ライト級王者アンソニー・ペティスが2度目の防衛戦!新設の女子ストロー級とダブルタイトルマッチが実現。UFC JAPANの敗戦から復活に挑むロイ・ネルソンも登場。
3月15日(日)午前11:00〜[WOWOWライブ]※生中継
ゲスト解説:五味隆典(UFCファイター)

<主な対戦カード>
ライト級タイトルマッチ:アンソニー・ペティスvs.ハファエル・ドス・アンジョス
女子ストロー級タイトルマッチ:カーラ・エスパルザvs.ヨアナ・イェンジェイチック
ヘビー級:ロイ・ネルソンvs.アリスタ・オーフレイム
ウェルター級:ジョニー・ヘンドリックスvs.マット・ブラウン
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