黄金時代の終焉、新たに芽生えた期待感 フィギュアGPシリーズ総括

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日本男子は羽生(写真)、町田、無良の3選手がGPファイナル進出を決めた 【坂本清】

 11月28日から大阪・なみはやドームで行われていたフィギュアスケートのNHK杯は、30日に全日程を終了。男子は村上大介(陽進堂)、女子はグレイシー・ゴールド(米国)が共にグランプリ(GP)シリーズ初優勝を果たした。

 そのGPシリーズもNHK杯をもって全6戦を消化。現地時間12月11日からはスペインのバルセロナでファイナルが開催される。日本勢では羽生結弦(ANA)、町田樹(関西大)、無良崇人(HIROTA)の男子3選手がバルセロナ行きの切符を手にした。

「小学生以来」の惨敗を喫した羽生

 昨季の同大会王者で、ソチ五輪、世界選手権と3冠を達成した羽生は苦しみながらのファイナル進出となった。第3戦の中国杯ではフリースケーティング(FS)前の6分間練習で中国の閻涵(ハンヤン)と激突。計5カ所を負傷しながら強行出場し、なんとか2位に食い込んだ。しかし、コンディション不良の影響を色濃く残したNHK杯では、本人が「小学生以来」と吐き捨てるような惨敗で、4位に沈んだ。2戦合計22ポイントはファイナルに進出した6選手の中で最下位だ。

「昨日は本当に悔しくて悔しくて悔しくてどうしようもなかったです。中国杯のときはけがをしたけど、焦っていなかった。今回は焦っていたことがすべてに響いていたと思います。6分間練習でも落ち着こうとしていたんですけど、『周りを見なきゃ』という自分の潜在意識みたいなものがあって、集中しきれなかったと反省しています」

 競技翌日に行われた一夜明け会見で、羽生はふがいない自身を責め立てた。ファイナルでは成績上位者ほど演技の順番が後になるため、最下位の羽生は第一滑走となる。それについては「ジュニア時代の自分に戻った感じです。本当にチャレンジャーですよ」と自虐的だったが、大会まで2週間とまだ時間はある。「今回(NHK杯)は5日間の練習でここまで状態を上げてきました。普通に練習量を積めば問題ないと思います」。19歳の五輪チャンピオンは闘志をたぎらせ逆襲を誓う。

新王者は誕生するか

スケートアメリカで優勝した町田(中央)。エリック・ボンパール杯でも2位に入り状態の良さをうかがわせている 【Getty Images】

 ファイナルの展望に目を向けると、男子は日本勢3連覇に期待が懸かる。本来の調子であれば、羽生が実力的に本命であるのは間違いないところだが、現状では何とも言いがたい。今年3月の世界選手権で、その羽生と大接戦を演じ銀メダルを獲得した町田は、第1戦のスケートアメリカで優勝。第5戦のエリック・ボンパール杯(フランス)ではミスが出て2位に終わったものの、状態の良さをうかがわせている。金メダルの有力候補と言えそうだ。

 地元開催で意気上がるハビエル・フェルナンデス(スペイン)も候補の1人。今季は第2戦のスケートカナダこそ無良に逆転を許し2位に甘んじたが、第4戦のロシア杯では安定した演技で優勝し、ファイナル進出1番乗りを果たした。メンタル面の脆さを垣間見せることもあり、逆に地元開催がプレッシャーとなる可能性もある。しかし4回転ジャンプの技術には定評があるだけに、ホームの利を生かせれば頂点は見えてくる。

 唯一連勝でファイナルに進出したマキシム・コフトン(ロシア)は2年連続の出場だ。昨季はSPでミスを連発し、5位で大会を終えた。今季は中国杯で羽生を、エリック・ボンパール杯で町田を退けるなど日本勢を相手に連勝を飾っているが、ミスのない演技を2本そろえることはできておらず、他の選手の自滅に助けられている印象が強い。

 初出場の無良とセルゲイ・ボロノフ(ロシア)は未知の雰囲気にのまれず、どこまで本来の演技を出せるかがキーとなる。無良はNHK杯でSP首位から3位に落ちており、本人も「優勝を争う経験が不足しているのを実感した」と語っている。自分を見失わず、平常心を貫けるかで結果も変わってきそうだ。

 いずれにせよ3選手が出場する日本勢がメダルを獲得する可能性は高い。羽生以外は誰が勝っても初優勝。果たして新王者は誕生するだろうか。

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