4位の羽生結弦「ここまで滑れて奇跡的」 NHK杯出場の日本勢、心境を語る

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NHK杯4位で終わった羽生。一夜明け会見では「悔しくてどうしようもなかった」と語った 【坂本清】

 フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ最終戦、NHK杯(28〜30日、大阪・なみはやドーム)に出場した羽生結弦(ANA)、村上佳菜子(中京大)ら日本の男女5選手が30日、取材に応じた。

 男子シングルで4位となり、12月のGPファイナル(スペイン・バルセロナ)進出を決めた羽生は「(4位という結果が)悔しくて悔しくて悔しくてどうしようもなかった」とコメント。しかし、中国杯での負傷の影響で出場さえ危ぶまれていただけに、「ここまで滑れるのは奇跡的」と語り、関係者やファンの応援に感謝を示した。

 初のGPシリーズ優勝を飾った村上大介(陽進堂)は「うれしいという気持ちしかない」とコメント。
 一方、女子の村上は、14季ぶりに女子シングルで日本選手のGPファイナル出場が途切れたことについて、「胸が痛むというか悔しい気持ちでいっぱい」と唇をかんだ。

 以下は取材に応じた男女5選手のコメント。

羽生結弦「悔しくて悔しくてどうしようもなかった」

 昨日は本当に悔しくて悔しくて悔しくてどうしようもなかったです。ちゃんと冷静に考えられていなかったと思うのですが、一夜明けて一番最初に出てきた頭の中に残っている言葉は『ここまで滑れるのは奇跡的だな』と。その奇跡を起こしてくださったのは、まぎれもなく自分のチームであり、周りの方の応援だったりということもあったので、皆さんのおかげだなと思いました。

(ジャンプについて)中国杯のときはけがをしたけど、焦っていなかった。今回と中国杯の違いは焦っていたか、そうでなかったかだけだと思っています。その焦りが今回はすべてに響いたと思います。インタビューとかでも全部言葉が速かったし、6分間練習だったりも落ち着こうとはしていたんですけど、『周りを見なきゃ』という自分の潜在意識みたいなものがあって、集中しきれなかったのではないかと自分では反省しています。集中できるときって、今やるべきことに集中しているという感じはあるんですけど、何をすべきかが分かるんですよ。でも何をすべきか分かっているのにできないというのは今回初めてでした。無意識にいろいろな方向に目が行っていたように感じます。自分のすべきことに集中していなかったのかなと。

(6分間練習で『もうぶつかりたくない』という意識が働いた?)そういう意識はなかったかと言えばあったと思います。特にフリーの、6分間練習でぶつかったときの軌道のフリップの前では本当はジャッジサイドを見てすぐにフォアを向くんですけど、ジャッジサイドを見られなかったです。ずっとバックの方向を見ていてパンクしてしまったので、若干の迷いというかびびりがあったんだと思います。(今後は)改善されていくと思います。
(6分間練習を6人で滑っているが改善策はあるか?)僕としては当たり前のことですし、僕らがルールを決めるものでもないです。もちろん発言はしていけるのかもしれないですけど、僕からしてみればぶつかってしまったのは僕らの不注意です。こうやってぶつかってしまったのは僕らが悪いですし、ルールのせいとかは関係ないです。ただしっかり注意して集中することが課題だと思います。

(セルフコントロールが未熟だと言っていたが?)とにかくブライアン(オーサーコーチ)との練習時間が短かった。本当はトロントに帰って2週間ほどしっかり練習する時間を取りたかったんですけど、思いがけず日本に帰ってきて5日間ほどの練習しかできませんでした。それによるちょっとした不安感だったりが、自分の精神的なものをコントロールできなかったかなと。普通に練習量を積めば問題ないと思いますし、練習の信じ方次第で少ない練習で信じることもできると思います。そこは新たな課題かなと。

(ファイナルに向けてのスケジュールは)とりあえずブライアンのメール待ちですね(笑)。すぐにスケジュールを送ると言われたのでそれ待ちです。
(今回の悔しさはいつ以来ぶりに味わうもの?)小学生以来ですね(笑)。ここまでボロ負けしたのは小学生以来なので。僕、ノービス上がる前の小学生の大会で絶対に勝てない人がいたし、ノービス時代にリンクがなくなったときに勝てなくなったことがありました。全然ジャンプを跳べなかったんです。そのときは結局練習時間が足りなくなっていたのもあると思うんですけど、今はもう子供じゃないので。そのときはスケート年齢で言えば一桁だったと思いますが、もう二桁で10何年やっているので、それを信じられるか信じられないかは僕次第です。あとは練習できなかったとか結果がどうとか関係なく、僕の精神的な持ちようだと思います。

(昨季は五輪シーズンで飛躍を遂げた。今季の入り方としてはどう感じているか?)別にこだわりはないです。試合は試合で、1つ1つ違うし、別に五輪がどうとか世界選手権がどうとか関係ないんですよ。もう終わったことですし、終わった名誉です。次はぎりぎり取ったファイナルなので、はっきり言っちゃうと昔より滑走順が早いわけですから。たぶん第一滑走ですよね。第一滑走なんてファイナルでやったことがないので、本当にチャレンジャーですよ。ジュニア時代の自分に戻った感じです。
(肩に力が入っていた?)それはないですね。ただ単に1人のスケーターとして、GPに臨んだ自分がミスを犯したというだけです。
(2週間という期間は長いか短いか?)考えてみれば僕、今回は5日間でここまでやったので時間はあると思います。

村上大介「この優勝で変わるかもしれない」

NHK杯で逆転優勝を果たした村上。今後の目標について「この優勝で変わるかもしれない」と話す 【坂本清】

 まだ優勝したと実感できていない状況です。うれしいという気持ちしかないですね。表彰台に乗れるとは思っていなかったし、羽生選手や無良(崇人)選手はファイナルを争ってこのNHK杯に来ていたので、僕が台に乗るとは思っていなかったです。ショートとフリーで自己ベストを出せて本当にうれしく思っています。
(ジャンプがよく決まっていたが、何が一番の要因?)前はジャンプを一発ずつ練習していたのですが、今はジャンプ3発くっつけて練習しています。本当に練習みたいに試合もできていましたね。
(今季は何を目標としていた?)とにかく今年は東日本選手権とブロック大会は優勝して、それはクリアしました。NHK杯は自己ベストを出して、来季はGPシリーズ2試合に出場できる権利がほしかった。全日本は最終グループに入ってなるべく優勝争いに絡みたいという感じでした。
(羽生、町田樹の間に割って入ろうという気持ちはなかった?)そうですね。とにかくチャンスがなかったので、活躍はできていなかった。だからここまで伸びるとはイメージしていなかったです。

(今大会で変わった点、良くなった点は?)試合の前とか以前はネガティブだったんです。ポジティブな面がなくて不安定感がハンパなかったんですね(笑)。でも先生(フランク・キャロル)はポジティブな話しかしなかった。『お前、ここまで良い練習を重ねてきたから、カメラやファンをあまり見ないで、練習みたいに滑ろう』とぎりぎりまで言われていました。何でか分からないですけど、今回は本当に練習みたいに滑れました(笑)。とにかくこの試合で初めて4回転を2回挑戦して、跳びました。本当に昔は『できるのかな』と不安でした。結果のことしか考えてなくて、自分が毎日練習していることを考えていなかったんですね。

(昨夜はどう過ごした?)あまり寝られなかったです。終わってからすぐピザを食べに行きました。ホテルに帰ってシャワー浴びてからインターネットの動画で自分の演技を見ました。
(普段は節制している?)前は体脂肪が9パーセントだったんですけど、今年は4パーセントにしました。ちょっと気にしています。意外と練習で体脂肪は落ちていて、プログラム構成もすごく厳しくなっているので、止まらずに最後まで練習していたらそうなっていました。そういう部分も試合につながっているのかなと。

(年齢的に焦る部分はあった?)ジュニアの選手、宇野昌磨選手とかすごい結果を出しています。それを見ただけで悔しさもでるし、羽生選手、町田選手、無良選手とはジュニア時代から争ってきたので、優勝できて良かったです。(昨シーズンは五輪があったが)一昨年はけがで休んで、昨季は健康と自分のベストで戻ってくるのが目的でした。だから五輪のことはあまり考えていませんでした。
(全日本も目標を軌道修正しなくちゃいけなくなったのでは?)ちょっとプレッシャーがありますね。(この優勝で変わっていきそうか?)今の練習の構成で良い方向に行っているので、全日本まで同じ方向で重ねていきたいなと思います。とにかく今回は今回で終わって、次は全日本なので、必死に練習してうまく入っていければと思います。
(4年後の五輪は)前は1年1年頑張っていこうと思っていましたけど、この優勝で変わるかもしれないなと思います。ちょっと今ハイです(笑)

無良崇人「優勝を頭に置いてやることがなかった」

SPで首位を奪ったが3位となった無良。「今回みたいに優勝というものを頭の中に置いてやるということがあまりなかった」 【坂本清】

 ショートが終わったときに、このままいけばうまくいくかもと思う状況ってあまり経験がないんですね。スケートカナダのときは実際に優勝できると思っていなかったんですよ。本当に今回みたいに優勝というものを頭の中に置いてやるということがあまりなかった。今回は最終滑走でしたし、村上大介選手も良い演技しましたしね。氷の上に立つまではそんなに意識しているつもりはなかったんですけど、動きとしてはもうちょっとリラックスしないといけなかったなと思います。

(今季は何が変わった?)4回転に関してはキーポイントなので、それの安定感を今年は求めていました。その効果が少なからず出ているかなと思います。あとはこういう状況になったときにミスが出ないようにすることは今後突き詰めていかなければいけないと思います。4回転は今は3回転とあまり意識のうえで変わらないです。これまでは4回転を特別なものと意識していて、これを跳ばないと勝てないとか、これが跳べなかったら他はどうしようとか思っていました。そういうことがなくなったので、今季は良くなったのかなと思います。

(先ほど経験が足りなかったと言っていたが)GPシリーズで表彰台に絡んだことがほとんどなかったんですね。今季はカナダ大会で優勝して、今回は表彰台を狙っていくということで、自分が思っていたよりもショートの結果が良かった。そうなったときにどういうモチベーションで臨んだらいいのか。勝ちにこだわり過ぎるのはきっと良くないので、どういう精神状態で臨んだらいいのか、今回はすごく勉強になりました。

(ソチ五輪を逃したことは自分にどういう影響を与えた?)引退した選手たちがいて、今まではその選手たちに引っ張ってもらっていたという意識が自分にはあったんですね。今度は自分が引っ張っていかなければいけないというポジションに変わったときに、羽生くんのようにきれいにジャンプを跳びたいですし、負けていられないという気持ちが沸いてきました。彼と一緒に試合をやると、自分にとって次の活力となるというか、やる気が出るんです。そういう気持ちがあって今はこういう形になっているのかと。

(6分間練習について)僕は自分の練習をしながら、人の練習も見ています。集中はしないといけないんですけど、周りも見ていないといけない。今回は多少みんなもピリピリしていたと思います。良いか悪いかは別として、周りが見えているときほど、自分が落ち着いていると感じられるので、僕はそうしています。僕らからしてみれば、ノービスの時代から現在の状況で6分間練習はやっています。これが普通だと思っています。ぶつかりそうになったときはこれまでもあって、全日本選手権で羽生君と衝突しかけたこともあります。そのときはうまく受け止められたので良かったんですけど、そういう危険なことはまれにあります。そこはお互いが注意しないといけないと思います。
(単純に6人を3人にすればいいという問題ではない?)僕はそういう問題ではないと思いますよ。

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