パトリック・チャンが語る羽生、高橋 来季の復帰に向けて充電中の元世界王者

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休養中でも圧巻の演技

パトリック・チャンが今季休養の理由やライバルの高橋、羽生について語った 【スポーツナビ】

 10月4日に行われたフィギュアスケートのジャパンオープンで、ひとり別次元の演技を見せたのがパトリック・チャン(カナダ)だった。冒頭の4回転トウループ+トリプルトウループ、トリプルアクセルを着氷させると、その後も次々にジャンプを決めていく。後半のトリプルフリップこそ、やや乱れたものの、演技が終了した途端、ガッツポーズを見せた。得点は178.17というハイスコア。2位のハビエル・フェルナンデス(スペイン)に23点近くの差をつける圧倒的な力を示した。

 もちろん彼の実力を考えたら、さほど目を見張る点数ではないのかもしれない。フリースケーティング(FS)の自己ベストより18点も低いし、昨季の序盤も同等の得点を記録している。驚くべきなのは、チャンが今季休養を宣言していることだ。3月の世界選手権を欠場したため、実戦は2月のソチ五輪以来となる。プレッシャーのかからない舞台ということは考慮に入れる必要はあるだろうが、グランプリ(GP)シリーズに出場する選手を軽々と上回るそのスキルやオーラにあらためてすごみを感じた。

「楽しく滑ることを忘れてしまっていた」

競技会に向けて休みなく競技を続ける中で滑る楽しさを忘れてしまっていたという 【スポーツナビ】

 ジャパンオープンの前日、短い時間ながらそのチャンに話を聞く機会に恵まれた。忙しいスケジュールにもかかわらず、こちらの質問に笑顔で答えてくれる。まず、休養を決めた理由について。

「自分の時間がほしかったんだ。ひと息つきたかったし、競技会の連続で、すべての期限に自分のコンディションを合わせなければいけなかった。ソチ五輪があった昨季は、普段よりシーズンが長かった。それが世界選手権を欠場した理由の1つでもあったんだ。特にここ5、6年は止まることなく進み続けなければならなかったので、自宅に戻って何もしないでゆっくり過ごす時間さえなかったよ。テレビをただ見ているような退屈なことですら、僕にとってはぜいたくなことだった(笑)。でも、本当にそういう時間がほしいと思っていたんだ」

 2006−07シーズンにシニアデビューして以来、チャンが本格的な休養に入るのは初のこと。10年には地元カナダで開催されたバンクーバー五輪に出場、10−11シーズン以降は世界選手権3連覇、GPファイナル2連覇など世界のトップを走り続けてきた。それは裏を返せば常にプレッシャーと戦っていたことになる。やはり相当な疲労があったようで、いつしかスケートを滑る楽しさを忘れていた。しかし、現在はそうした重圧と無縁の生活を送っており、新たなモチベーションも生まれてきているという。

「これまでは厳しい戦いがあって、ジャンプをどう跳ぶか、大会で優勝するといったことに集中していた。ただそれを考えるあまり、楽しく滑ることを忘れてしまっていたんだ。今は、少しずつその楽しさを取り戻している。プレッシャーもないし、朝起きて『今日は滑りたくないな』と口にするのも自由。でも、実際のところは、ジムやリンクに行きたいというモチベーションを持ち続けていることに気づいたんだ。そういう気持ちになれるのは、スケートが大好きだということだよね」

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