稲葉篤紀が坪井智哉に語った引き際の哲学 こだわり続けた“全力疾走”

ベースボール・タイムズ

引退しても情熱は変わらず、「第2の稲葉を」

2007年9月26日、楽天戦でサヨナラ打を放った坪井氏(右)と稲葉 【写真は共同】

――日本ハムでは同僚として6年間をともに過ごしましたが、その中で印象深い出来事などはありましたか?

 そうですねぇ。僕がサヨナラヒットを打った時ですかね。僕が打った後、稲葉さんが満面の笑みで僕を抱きかかえてくれたんです。そのシーンは今でも鮮明に覚えていますね。同じチームではありますけど、他人のことに対して「こんなにも喜んでくれるんだ」と思いましたよ。

――日本ハム退団後、坪井さんはオリックス、そして米国に渡って野球を続けていましたが、その間に連絡などは取っていたりしたのですか? また引退を聞いた時は?

 頻繁に、というわけではないですけど、節目ではメールなどで連絡はしていましたね。僕が米国に行く時も連絡しましたし、僕が今年で引退すると決めたときは連絡をもらいました。逆に稲葉さんの引退を聞いた時は、「長い間、お疲れさまでした」とメールを送りました。膝の調子がよくないとは聞いていたので、「体をいたわってゆっくり休んでください」と……。僕の気持ちとしては、たとえ膝が悪くて守備ができなくても「代打一本、もしくはDHだったらまだまだできるんじゃないか」という思いが半分、もう半分は「そういえば、全力疾走ができなくなったら辞める時だと言っていたなぁ」という思いでした。半分半分です。でもまぁ、体の痛みを我慢しながらやっていたと思うので、僕からは「お疲れさま」としか言えないですね。

――今後の“稲葉篤紀”という男の活躍に期待するところは?

 僕が期待するっていうのはおかしいですけど、まずは10月5日の引退試合で、いつも通りのプレーをしてもらいたい。稲葉さんは涙もろいので「あんまり泣き過ぎないように」と……。指導者になっても、稲葉さんの野球に対する情熱は変わらないと思いますし、教える時も自分がプレーしていた時と同じように、一切手を抜かずに教えるんだろうなと思います。稲葉さんという存在は“野球界の宝”だと思うので、稲葉さんの技術、メンタルをこれからの選手たちに伝えて、“第2の稲葉”をつくりだしてもらいたいですね。

(取材・文:三和直樹/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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