松井裕樹から主役を奪った大砲3人の共演、「スターへの登竜門」フレッシュ球宴総括

田尻耕太郎

合計317キロのド迫力長距離砲トリオ

左からオリックス・奥浪、ロッテ・井上、西武・山川。合計317キロの長距離砲トリオが長崎の夜空に4発のアーチをかけた 【写真は共同】

 この日、彼らから主役を奪ったのは、今後が楽しみな長距離砲たちだった。

 試合後のヒーローインタビューが痛快だった。マイクを持ったアナウンサーが「お立ち台が壊れないか心配です」と思わずのけ反ったのだ。MVPに輝いたのは「アジャ」こと井上晴哉(千葉ロッテ)。同点に追いつかれた直後の8回裏、左腕の笠原大芽(福岡ソフトバンク)の141キロをジャストミートした打球は超がつくほど特大の一発。左翼スタンド最上段に弾み場外へと消えていった。これがこの試合2本目のホームラン。試合は7対6でイースタン選抜が勝利し、決勝弾を含む4打数3安打3打点の井上が文句なしで賞金100万円ゲットとなった。

 そして井上の両隣に立ったのが、一時勝ち越しとなる、こちらも豪快な一発を放った山川穂高(西武)。そして、ウエスタンからも特大アーチを放り込んだ奥浪鏡(オリックス)だ。それぞれの体重が井上・114キロ、山川・105キロ、奥浪・98キロ(選手名鑑では95キロだが、試合後に本人に現在体重を確認)。計317キロのド迫力である。
 大卒ルーキーの山川はイースタンで本塁打、打点の二冠とすでに大砲の片りんを見せている。打席でバットを構える際、まず右手だけで構える位置を決めてそこに左手をすっと添える。チームの先輩・中村剛也をそのままコピーしたようなフォーム。まさに「おかわり2世」なのだ。

「岡山の李大浩」奥浪は丁寧な好青年

 高卒ルーキーの奥浪は、野球ファンの中でもまだあまり知られていない存在だろう。創志学園(岡山)では甲子園出場経験なし。それでも通算71本塁打をマークした。その中には、今年ドラフト最上位候補とされる済美(愛媛)の安楽智大から放った2打席連発が含まれている。打撃には柔らかさがあり「岡山の李大浩」との異名を取ったとか。オリックスにはドラフト6位で入団した。

 試合後に取材をさせてもらったが、受け答えがとても丁寧で実に好青年。「(岡山の李大浩について)有名な選手に例えてもらえるのは光栄。恥じないプレーをしていきたいし、いつかは僕の2世と言われる選手が出てくるよう、頑張っていきたい」とコメントも初々しいのだ。それでも「今日は井上さんが2発打ちましたが、3年後か5年後には僕が一番ホームランを打っている打者になるよう努力していきたい」と、スラッガーとしての強いこだわりも見せた。

 ずっと言われ続けているが、昨今のプロ野球界では好投手に比べて和製大砲がなかなか出てこない。野球の華はやはりホームラン。本塁打ランキングを日本人選手が争うのを望む声はよく聞かれる。

 フレッシュ球宴は「スターへの登竜門」。過去にMVPを獲得した選手が大成した例がいくつもあり、代表格が1992年のイチロー(当時登録名は鈴木一朗=オリックス)、2004年の青木宣親(当時ヤクルト)といった現メジャーリーガーたち。他にも88年藤井康雄(阪急)、90年石井浩郎(近鉄)、93年桧山進次郎(阪神)、03年今江敏晃(ロッテ)、09年中田翔(北海道日本ハム)など後にチームの主軸となった選手たちの名前もずらりと並ぶ。その意味でも「井上晴哉」「山川穂高」「奥浪鏡」の3選手の名前はしっかり覚えておいた方が、これからのプロ野球をもっと楽しめるはずだ。

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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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