羽生「金メダルのここからこそがスタート」=高橋、町田フィギュア試合後コメント

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日本男子初のフィギュア金メダリストとなった羽生は「ここからがスタート」とまだまだ上を目指している 【Getty Images】

 ソチ五輪のフィギュアスケート男子フリースケーティングが現地時間14日(日本時間15日)、当地のアイスベルク・パレスで行われ、ショートプログラム首位の羽生結弦(ANA)が、フリー178.64点、280.09点で優勝した。同種目では日本男子史上初、また今大会の日本勢初の金メダルとなった。

 2位は世界選手権3連覇のパトリック・チャン(カナダ)でフリー178.10点、合計275.62点。3位はカザフスタンの20歳、デニス・テンでフリー171.04点、合計255.10点。

 日本勢では、町田樹(関西大)がフリー169.94点、合計253.42点で5位、前回バンクーバー五輪銅メダルの高橋大輔(関西大大学院)はフリー164.27点、合計250.67点で6位だった。

 以下は羽生、高橋、町田の試合後コメント。

羽生「日本人として誇らしく思う」

――金メダルを取った感想は?

羽生「本当にびっくりしているとしか言いようがないですね。はっきり言って自分の演技には満足していないですし、トリプルフリップという自分の中では割と確率の高いジャンプをミスしてしまったので、結果的に少し神経質というか緊張していたのかなと思います。でも結果として優勝したという意味は日本人として誇らしく思います」

――精神的にプレッシャーがあった? サルコウを失敗したあとにスピードがなくなったように見えたが?

羽生「全然体が動かなかったですね。6分間(練習)からすごい焦ってもいましたし。ただ一生懸命やろうとはしていました。どんな状況でも全力を尽くそうと努力しました」

――ミスもあったが勝てたその勝因は?

羽生「やっぱりショートがあれだけできたのが大きかったんじゃないですかね。それが僕の勝因だと思っています」

「仙台への思いも忘れないように」

完ぺきな演技ができなかったフリー、「金メダルはだめだ」と思ったという 【Getty Images】

羽生「最初の4回転サルコウで転倒して、トリプルフリップがうまくいかなくて少し金メダルは遠ざかったかなと思いました。後半になるにつれて足が重くなって、体力もなくなり、マイナスな気持ちも出てきて、その中でやるのも大変でした。今回は金メダルはダメだと思っていました」

――3年前にホームタウンが地震にあったが?

羽生「僕自身が津波のことや地震のことを言っていいか分からないです。実際こうやって金メダリストになりましたが、僕1人が頑張ったからといって復興に直接つながるわけではないので、すごい無力感というか、そういうのを感じますし、何もできていないんだなと思います。一生懸命やって五輪で金メダルを取れたのはありますけど、やはりここからまた五輪の金メダリストという人になれたからこそ、スタートなんじゃないかなと思います。ここから復興にできることがあるんじゃないかなと僕は今思っています」

――カナダのトロントを拠点にしているが、金メダルを取ったことで、カナダに渡る決断をどう思うか? カナダで一番学んだことは何か?

羽生「カナダへ行く決断は非常に難しいものでしたし、仙台に残っていたいという思いもすごくありました。カナダに行って良かったとは思っています。でもカナダに移った2年間、仙台にいたそれまでの期間は同じように大事です。今回の五輪はカナダでやってきた集大成ですが、仙台への思いも忘れないようにしないといけないと思っています」

「僕は結局何ができたのか」

――震災で被災し、そのとき何が一番人として大事だと思った? それは自分自身の成長にどう役立った?

羽生「僕から震災や津波のことについて口を開くのはすごく難しいです。それは五輪チャンピオンになったからこそ難しいんだと思います。確かにあった事実として、僕は震災のあと、スケートができませんでした。本当にスケートをやめようと思ったし、生活することすら難しくて、ぎりぎりの状態だったんです。トリノ五輪で金メダルを取った荒川静香さんが自分の滑っていたリンクに寄付をしてくださって、僕はここにいられると思っています。もちろん多くの方に支援していただき、感謝の気持ちを持たなきゃいけないと思います。自分は今ここに1人でいます。金メダリストは日本の男子スケーターとして1人しかいないですけど、表彰台に上がったとき、本当に日本の皆さん、世界中で応援してくださった皆さんの思いを背負って演技できたことをうれしく思いました。恩返しができたんじゃないかなと思っています」

――団体戦については?

羽生「僕が言えることではないんですけど、これが1回目の団体戦だったので、調整が難しかったと思います。団体戦に出た選手はやはり団体戦と個人戦の間はそれぞれ違うので、それはやっぱり個人の能力というか個人個人がしっかりできるようにすべきだと思っています。それはフィギュアスケートというスポーツは同じ日にやるのは難しいので、その間がそれぞれ違ったりしてはしょうがないですし、これから団体戦が続いていくようならば、その短い期間でできるようにするのが僕らの仕事かなと思います」

――優勝したのに笑顔がないのはなぜ?

羽生「ベストな演技ができなかったのもそうだし、実感が湧かなかったのもそうなんですけど、先ほど質問された震災のことで、本当に何と言っていいか分からないですし、自分が何ができたかというと、自信を持ってこれができたというものが何もなかったんです。そういうことを考えていたら、トロントに行って、震災が起きたところから離れていって、こんなんで良かったのかなと思ってしまいました。笑顔がない理由としては、やっぱり震災のことが一番大きいですね。僕は結局何ができたのかと思ってしまいます」

「被災した方々に何かお礼ができれば」

次の目標は3月の世界選手権 【Getty Images】

――これからホームタウンに対して何ができると考えているか?

羽生「僕がリンクを失って何カ月間かアイスショーに呼んでいただき滑ることができたんですね。その間に荒川さんや、高橋大輔選手や小塚崇彦選手らたくさんのスケーターがチャリティーイベントを企画してくれて、そのおかげでホームリンクが復活して、滑ることができるようになりました。僕はプロじゃないので、僕ができることはそんなにないと思うんですけど、将来的にチャリティーイベントしてスケーターだけじゃなく、震災に関わった方々、被災した方々にも感謝の気持ちとして何かお礼ができればなと思います」

――今後の目標は?

羽生「日本代表として世界選手権(3月26日〜30日、さいたまスーパーアリーナ)の代表に選ばれているので、その大会に向けて一生懸命頑張っていきたいです。五輪という一大イベントが終わったので、少し気が抜けてしまう部分があるかもしれないですが、僕にとって世界選手権はすごく大事な大会ですし、まだ1回しか表彰台に乗ったことがないので(3位)、また一生懸命頑張ります」

※次ページは高橋、町田のコメント

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