高梨沙羅の失速、その要因を探る=ソチでつかめなかった風とスピード

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高梨沙羅の失速、その要因はどこにある? 【写真は共同】

 高梨沙羅(クラレ)が敗れた。「金メダル大本命」と言われていた“女王”が、表彰台にも上がれないという結果になった……。

 ソチ冬季五輪のノルディックスキー女子ジャンプのノーマルヒル決勝が現地時間11日、当地のルスキエ・ゴルキ・ジャンピング・センター(K点=95メートル、ヒルサイズ=106メートル)で行われ、高梨は2本合計243.0点(1本目=100.0メートル/124.1点、2本目=98.5メートル/118.9点)と、優勝したカリーナ・フォクト(ドイツ)に4.4点差をつけられ4位に終わった。高梨が表彰台を逃すのは、昨年8月のサマーグランプリ・クーシュベル大会(フランス)の5位以来で、冬の大会に限ると、13年2月のワールドカップ(W杯)札幌大会の12位以来、1年ぶりのことになる。

 札幌でのW杯時も、周囲から大きな期待を受けて臨んだ試合だったこともあり、今回の敗因も“プレッシャー”という一言で終わらせることができるかもしれない。実際、高梨も「自分の思い通りに飛べなかったということは、自分のメンタルの弱さだと思う」とコメントしており、少なからず「メンタルの弱さ」が敗因の1つとして挙げることができるだろう。
 しかし、それだけの理由で今季のW杯13戦10勝の女王が敗れるわけがない。ここでは、そのほかの要因を探ってみる。

めまぐるしく変わる風の影響

 まずは、スキージャンプにとって重要な“風”の影響だ。ソチのジャンプ台は周りの環境に合わせながら、横風を受けないように設計してある。しかし、風の向きは一定ではなく刻々と変化していた。日本代表の小川孝博監督も「(試合の最中に)風がめまぐるしく変わり、向かい風もあれば、横風もあり、追い風もあった。2本目の時は、それが強くなって、2メートル、3メートルと風があり、青信号になってサインを出してからも変わったりした」と、まったく状況が読めない状態だった。

 その中で高梨の1本目は、出場選手の中で唯一、ウィンドファクター(風の条件でもらえる得点)でプラス3.1点が入る追い風(他の選手はほとんどがマイナスか、プラス2.0点以内だった)。
 高梨も「後ろから(風に)たたかれるような感覚は合った」と語っており、向かい風だったら着地のところで粘れるところだが、それが追い風で落とされてしまったことで、着地におけるテレマークを付けるのも困難な状況だった。
 1本目の時点で優勝したフォクトとは、2.7点差をつけられたが、距離ポイントでは3メートルの差で6.0点差、飛型点では2.0点差、ウィンドファクターでは高梨が5.3点多くもらっている(フォクトのウィンドファクターはマイナス2.2点)。

 高梨自身は「(風の影響があっても)上手な選手はそれでも持っていけるので、私の力不足」と、風のせいとは言わなかったが、ここに1つの要因があったことは間違いない。

アプローチのスピードを乗せきれなかった

 もう1つの要因は、アプローチでスピードに乗れなかったことだろう。ソチのジャンプ台の形状は、スタートの傾斜が緩やかで、徐々に斜度の変化がきつくなるタイプ。この形のジャンプ台では序盤にGを感じづらく、Gを感じ始めた時には踏み切らなければいけないということで、タイミングが取りづらいと言われていた。
 この日のジャンプでも「長くアプローチを捕まえないといけないのに、急激に立ち上がってしまって、少し右になってしまい、いつもの悪い癖が出た」とスピードに乗りきる前に踏み切りの態勢に入ろうとしたため、飛型態勢も崩れてしまったという。

 実際、フォクトと3位のコリーヌ・マテル(フランス)は、踏み切り時のスピードが時速91.3キロ、2位のダニエラ・イラシュコ=シュトルツ(オーストリア)も90.8キロと、1本目、2本目ともに90.3キロ程度にとどまった高梨より、スピードが出ていた。
「(ソチのジャンプ台では)スピードのアベレージを出すことが苦しかった。もう一度、アプローチを見直さないといけないなと思います」と、修正すべき課題として取り組んでいくと話している。

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