金メダル候補は17歳の“モノノフ” 新種目スロープスタイル王者・角野友基
中学生でプロとしてスノボ漬けの生活
スノーボード男子スロープスタイルの初練習でマトリョーシカを跳び越える角野友基=ソチ 【共同】
角野は小学校2年生の時、父親の影響でスノーボードを始める。「やってて楽しくて。気づいたらはまっていた」とスノーボードの魅力に取りつかれ、父親と一緒によく雪山へと遠征していた。スキー場では普段からジャンプや障害物を滑っていて、「それがスロープスタイルだと気付いたのは中学生になってから」と話すが、「最初から結構うまく滑れていて、『うまいね』って言われることもあった」と小さい頃からその才能の片鱗を見せていた。
そして小学生の頃から国内の大会に出場。11歳でスポンサー契約も取り付けプロのボーダーとなると、14歳の時にはプロの大会で初優勝を飾る。
「この優勝で、プロのボーダーとしてやっていきたいなと思いました。この頃から、友達と山に家を借りて、毎日スノーボードの練習をするようになりました」とプロ意識も目覚め、スノボ漬けの生活が始まった。
そして2012年12月、中国・北京で行われたスノーボードのストレートジャンプのコンテスト「AIR&STYLE」で、日本人ボーダーとして初めて優勝。そして翌年の13年には、国際スキー連盟(FIS)が主催するワールドカップ(W杯)を転戦するようになり、シーズン最後のスペイン・シエラネバダ大会、スロープスタイルで初優勝を飾ると、年間種目別王者にもなったのだ。
「僕のスタイルを好きになってもらえたらうれしい」
昨年末、角野が米国合宿から一時帰国していた時に、ソチ五輪に向けた思いを聞いてみた。
「緊張するかもしれないけど、五輪という舞台をどれだけ精一杯楽しめるか。緊張して頑張れないというのが一番駄目なので、楽しんで楽しんで攻める滑りを見せたい」と意気込む。そこには、“五輪の雰囲気を楽しんでやろう”という気持ちでワクワクしている表情が見てとれた。
またスロープスタイルの魅力について尋ねると、「スロープスタイルは、個人個人、人それぞれ滑りが違うんですよね。やる技は同じでも全然形が違ったり、形にとらわれない競技なので。だから僕には僕のスタイルがあって、ほかの人にはほかのスタイルがある」と、表現者としても感じる魅力があることを教えてくれた。その上で「見ている人には、僕のスタイルを好きになってもらえたらうれしい」と、自分の滑りを楽しんでもらいたいと願っている。
そしてソチ本番に向けての課題は、「難しい技の完成度を上げたい。トリプルコークが僕の技の中では最高難易度なんですけど、それを平均以上に、ちゃんと立てるようにしたい」と自己分析。技を磨き、それが成功した時には、五輪での表彰台が見えてくると確信しているようだった。
目指すは「世界のモノノフ・ナンバー1!」
試合前には、ももクロの曲を聴いてテンションを上げている 【スポーツナビ】
この大会は五輪のスロープスタイルとはルールが異なるが、成功率を高めていたというジャンプの大技「トリプルコーク1620」を成功させるなど、五輪本番での自信につながる結果を出している。
「自分の強みは、大事な時に力を発揮できること。特に、最も大事な時に力を発揮できるとよく言われている」と、五輪という“大事な時”に向けての調整は順調なようだ。
W杯年間王者として臨む五輪なだけに、プレッシャーを感じていてもおかしくはない。ただ、角野にとって五輪の舞台は、自分自身が楽しむ場所でもある。
「メダルを取るにしても、内容を大事にしたい、という意識があります。金メダルを取っても、楽しくない金メダルだったらうれしくない。滑っていて『楽しくて最高!』という感じで金メダルを取れたら、自分は勝ち組になれるかなと思います。なので、五輪では精一杯楽しみたいと思います」
そして「スロープスタイルは日程的に最初の種目なので、後に続く日本チームが頑張れるように、僕が勢いをつけられたらいいなと思います」と日本選手団の先陣を切り、2月6日の予選に登場、開会式の翌日となる8日に行われる決勝(日本時間17時45分〜、準決勝は同日14時30分〜)で、メダル獲得を目指すと意気込んだ。
余談だが17歳の彼は最後にこんなことを言っていた。「僕、モノノフ(ももいろクローバーZのファン)なんです!」。『緑推し(ももクロの有安杏果さんをお気に入りとするファン)』を公言し、試合前にはももクロの曲を聴いてテンションを上げている。
「そこは絶対に強調しといてください!(笑)」
そんな今どきの子らしいところもある世界チャンピオンが、ソチの舞台で華麗なジャンプを披露しメダリストになることを夢見ている。
<了>
(文・尾柴広紀/スポーツナビ)
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