バロンドールはC・ロナウドで決定!?=FIFAに色濃く残る“ご都合主義”

“メッシ贔屓”を公言した会長の罪滅ぼし

ブラッター会長の“メッシ贔屓”発言が引き金に!? 【Getty Images】

 FIFAがバロンドールの投票を再開した本当の理由は、ジョセフ・ブラッター会長の失言により失ったレアル・マドリーとロナウドの信頼を回復するためだという見方もある。
 先月ブラッターはオックスフォード大学の公演中に自身のメッシ贔屓を公言した上、「ロナウドはまるでピッチ上の軍総だ」と言っておどけた敬礼ポーズを見せたことが大いに批判された。

 ブラッターがロナウドよりメッシを好むこと自体に問題はないが、FIFA会長という立場を考えればそのことを公言すべきではなかった。それがバロンドールの投票期限が迫っていたタイミングであればなおさらだ。

マラドーナ移籍はチケット売り上げのため?

 FIFAには過去にも2度、ご都合主義の制度改変を行ったことがある。1つは1992年にディエゴ・マラドーナがドーピング疑惑による15カ月の出場停止処分を受けていた際、彼の放出を望まなかったナポリに必要な移籍金を用意できていなかったセビージャからのオファーを聞くよう働きかけた一件だ。

 FIFAの後押しにより望み通りセビージャ移籍を実現したマラドーナは、その後オーストラリアとの予選プレーオフにてアルゼンチン代表に復帰し、無事1994年のW杯本大会出場を決めた。さらに言えば、この重要極まりない一戦においてマラドーナがドーピング検査を受けることもなかった。

 こうしたFIFAのマラドーナに対する便宜はすべて、フットボール未開の地・米国で開催されるW杯への注目度とチケットの売り上げを保障するためのものだった。さらにはそのマラドーナが本大会でドーピング検査に引っ掛かり、新たに15カ月の活動停止処分を受けたという事実は、FIFAが必要な際のみマラドーナに便宜を図り、必要がなくなったとたんに突き放したことをよく示している。

 またFIFAは、以前フットボール史上最高の選手を決めるべくインターネットによる投票を募った際、マラドーナがペレを上回ったことで後者との関係が悪化するのを避けるべく、急きょ設けた別の賞をペレに捧げることで両者の顔を立てたこともある。

便宜を図らずともロナウドで納得なのだが……

 ロナウドが大活躍した予選プレーオフの直後にバロンドールの投票を再開した今回の一件も、これらの前例と同様のものだと言える。だがそんな便宜を受けなくとも受賞できた可能性があるロナウドにとって、それは何のプラスにもならない配慮だったと言わざるを得ない。

 恐らくブラッターの失言さえなければ、今回の一件が起きることもなかったのだろう。だがもう遅い。誰が受賞するにせよ、既に問題は生じてしまっているのだ。

<了>

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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