協賛企業・ヤクルトが期待する大会の効果=世界水泳バルセロナ2013

スポーツナビ

世界選手権の協賛企業となっているヤクルトの村上氏に、スポンサーになった経緯や意義などを語ってもらった 【スポーツナビ】

 ヤクルトと聞いて大半の人がまず思い浮かべるのは、プロ野球チームか、乳酸菌飲料だろう。中には陸上競技部やラグビーチームと言う人もいるかもしれない。しかし、水泳世界選手権の公式スポンサーであることは案外知られていないのではないか。ヤクルトは2005年のカナダ・モントリオール大会から協賛企業に名を連ねている。

 そもそもの経緯は、グローバル化を進めていたヤクルトと、継続的に大会を支援してくれるスポンサーを探していたFINA(国際水泳連盟)の意向がマッチしたことで、この協力体制が生まれたのだという。ヤクルトが世界選手権をサポートし続ける意義とは何なのか。05年にこのプロジェクトを立ち上げ、スペインのバルセロナで行われる今大会も担当者として現地に赴く、食品事業本部理事広告部長の村上光男氏に、当時の苦労話や今大会に期待することなどを語ってもらった。

「我々とFINAの意向がうまくマッチした」

――まず御社のスポーツに対する取り組みを聞かせてください。プロ野球のヤクルトスワローズや、サッカーのジェフユナイテッド千葉のスポンサーを務めていますが、これはどういった考えに基づかれているのでしょうか?

 弊社の企業理念、コーポレートスローガンには「健康」というものが、必ず付いてくるんです。その中で食を通しての健康づくりというのが、第一義としてあります。またスポーツを通しての体力づくりであるとか、精神的な修養であるとか、心身ともに健康というのが当然あるべき姿だと思っていますので、それに対するサポートはやっていきたいなと。

 それで、なぜこういった取り組みかということになると思います。弊社の場合、まず有名なのが野球のスワローズです。これはプロスポーツですから、スタンスは少々異なりますが、ほかには社員が所属する陸上競技部やラグビー部があります。特にチームスポーツ、陸上も駅伝を例にすればやっぱりチームスポーツということになりますので、そういったものを一つ育てていきたいなと。最近は両方とも頑張っておりますし、我々も応援していきたいと思っているんです。スワローズも、1968年(昭和43年)に弊社のグループの一員になったんですけど、そのときのトップの意向としてヤクルトグループが一緒になって応援できるような、みんなの気持ちが一つになるような存在が必要だったということがあります。

――スポーツチームをサポートすることによって、御社が得たメリットはどういう部分でしょうか?

 スポーツの勝ち負けだったり、選手の活躍だったり、そういったものがいつも社内にあるわけですよね。それがお互いの興味・関心につながり、例えば外部の方とお話しするときも、話のとっかかりになったりする。「ここのところ弱くてね、強くてね」という話があったり、仕事をするうえでも、皆さんと共通の話題が持てたりするんです。社外的にも社内的にもコミュニケーションの一つのツールとして、大変ありがたいものだと思いますね。

――05年から世界選手権のオフィシャルパートナーになっています。パートナーになった経緯を教えてください

 実は私がスタートしたプロジェクトなんです。当時、弊社もグローバル企業の仲間入りをしてきたというような感覚がありました。それで、何かグローバル企業としての取り組みを、世界に発信できるようなものはないかと。そんなときにたまたま、FINA(国際水泳連盟)の話を聞いたんです。実は、FINAは世界選手権の大会ごとに、開催国のスポンサーを募ったり、ナショナルクライアントに参加してもらったりと、非常に短期的な運営をやっていると。それを切り替えて、安定的に自分たちのスポンサーと一緒に手を組んで、協力し合いながら盛り上げていくということを、やっていきたいという意向があったようです。そういう意味ではちょうど我々と、FINAの意向がうまい具合にマッチしたのが05年だったということです。

「契約書の一語一句から始めた」

――世界水泳のオフィシャルパートナー契約を18年まで延長しました。継続するにあたりメリットは、どういう部分にあると考えていますか?

 長期的な契約になるので、お互いの信頼関係に基づいたものになります。我々もFINAに対して先を見据えたお願い事もできますし、FINAとしても我々に対してある程度のメリットを出せるような提案もできる。安定的にお互いの協力関係を築けるというのが、大きなメリットと思っています。

――05年にプロジェクトをスタートさせた当時、苦労したことはありましたか?

 FINAとしてはある程度の期間を定めて、公式スポンサーになるんだという企業が、いままではなかった。我々もそういう国際的な大会のスポンサーをやったことがない。どういう関わり方をするのか、あるいはお互いのメリットをどこで持っていくのかとかですね。お互い初めてだったもので、契約書の一語一句から作っていったものですから、大変な時間と手間がかかりましたね(苦笑)。

――それはかなり大変そうですね(笑)

 一番苦労したのは、05年にモントリオールで大会が開催されたのですが、当時カナダではヤクルトを販売していないんですよ。「これは何なんだ」というところから、やっていかなければならなかった。現地にこのヤクルトという商品を知らしめることが一番苦労しましたね。ヤクルトを飲むメリットなどを説明するために、試飲コーナーや、来場者に説明をするためのセミナーを開催しました。

――それで理解はできたのですか?

 少々不本意ではありましたが、理解というより「これ、うまいじゃない」と事務総長の方がえらく気に入ったんです(笑)。何かのときは必ず持って歩いていました。あと、たとえば東南アジアやメキシコの選手なんかはもともと知っていて、商品を選手用に置いておくと、どんどん持っていくわけですよ。するとヤクルトを全然知らない選手も「これ何だ?」と、選手同士で教え合ったりして、口コミで広がっていったという場面はありましたね。

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