主将・高橋大輔が示した団体戦の戦い方=国別対抗戦・男子FS

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演技後、思わずホッとした表情を見せた高橋。キャプテンの仕事をしっかり果たした 【坂本清】

 12日に第2日を迎えたフィギュアスケートの世界国別対抗戦2013。男子フリースケーティング(FS)では、日本チームのキャプテン・高橋大輔(関大大学院)がフリー168.65点、合計249.52点で総合トップに輝いた。また、無良崇人(中京大出)も目標だった4回転ジャンプを完璧に決めて、フリー156.03点、合計は自己ベストまで0.5点の233.68点で5位と健闘。第2日終了の時点で日本は暫定3位となった。

「チームのために」2本目の4回転を回避

 来年2月のソチ五輪で採用される団体戦。今回の国別対抗戦は男女シングル各2人と、ペア、アイスダンス各1組の合計点で争う(五輪はシングル男女各1人)。日本はペアの出場がなく無得点となるため、戦前から厳しい争いが予想されていた。そんな状況下、高橋が見せたチームプレーに徹する姿やキャプテンシーには目を見張るものがあった。

 前日のショートプログラム(SP)で本来の演技ができず、FSでは「4回転は捨てるくらいの気持ちで思いっきりいく」と開き直った高橋。だが、チームの連覇に向けてひそかに作戦を練っていた。それは、1本目の4回転ジャンプに成功したら、続く2本目の4回転を回避して難易度を落とすこと。基礎点は下がるものの確実にジャンプを成功させて得点を稼ぐためだ。
 作戦は実行に移された。演技冒頭、両手をつきながらも4回転トゥループを回りきると、続く4回転トゥループを、急きょトリプルフリップからのコンビネーションに変更。これをきれいに決めて、基礎点6.60と加点0.90を獲得した。
 失敗でもいいから4回転を2度試したいという思いはもちろんあった。高橋自身も、「個人戦ならやっていたと思う」と明かす。それでも今大会で“4回転ジャンプの2連続失敗”というリスクを冒そうとはしなかったのは、個人ではなく「チームのため」の演技だったからだ。団体戦である今大会はひとつのミスがチーム全体の結果にも大きく影響してしまう。だからこそ、高橋はあえて不安の残る4回転は回避したのだ。

献身的な応援がチームの力に

戦略を実行しつつも、情感たっぷりの演技を披露 【坂本清】

 高橋のチームへの献身的な姿勢は演技面だけではなく、応援にもよく表れていた。初日の試合後会見では「自分のパフォーマンスの前に応援するというのは意外と疲れるし、声を出すこともパワーを使うので(体力を)温存することがなかなかできず難しい」と本音を漏らしたが、応援ブースでおどけて見せたり、会場を巻き込んで名前をコールしたり、チームの誰よりも体を動かして応援していたのは高橋だった。

 個人戦にはない仲間からの応援に、チームメートも心強さを感じているようだ。「滑る前はすごく緊張していた」という無良は、チームメートからコールを受けて「我に返った」と気持ちを落ち着かせることができたという。また、アイスダンスのキャシー・リード(木下クラブ)も「みんなのサポートがすごくうれしかった」と声援を力に変えた。高橋が戦前、「『僕も頑張ろう』『私も頑張ろう』と思えるような演技を」と語っていたその思いがチーム全体にも広がり、チームの絆がより強まっていることを伺わせるふたりの発言だった。

 世界選手権からわずか1カ月。ただでさえ肉体的にも精神的にもコンディションを合わせるのが難しい中、高橋は団体戦であることを誰よりも意識し、チームのために最善を尽くす、まさに“キャプテン”と言うにふさわしい働きを見せた。

 国別対抗戦はきょう13日が最終日。きのうの試合を終えて「少し時間があるので、何か(応援グッズを)買えるものがあったら買いに行って、盛り上げられるようにしたいと」と笑顔で語った高橋。国別対抗戦の3日間で最も熱い応援に期待しつつ、高橋とともに日本チームに大きなエールを送りたい。

<了>
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