FC東京の長友「無名でもW杯の舞台に立てることを証明できた」=日本代表W杯メンバー帰国会見

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長友「ウォルコットが今まで対戦した中で一番速かった」

エトーら強力なFWにも決して負けない強さを見せた長友 【スポーツナビ】

――大会を楽しめか? つらい思いや苦しいという気持ちは?

 つらいという気持ちはなかったです。楽しもうと思って、やっていたので楽しめました。

――「やられてしまうのでは」という不安は?

 試合前はその気持ちがないと言ったらうそになりますけど、自分に自信を持って、小平でやってきたことには自信を持っていたので、試合に入ったらやられる気はそこまではしませんでした。

――キーマンを押さえる指令は毎回、監督から直接?

 2日ぐらい前とかに。エトー(カメルーン)のときは、相手(のポジション)が左なので右で行くかもしれないと(直前合宿地の)スイスで言われました。不安というより、楽しみでしょうがなかった。強い相手とやりたかったので。W杯に下手な選手はいませんけど、より強い相手とやれるという幸せを感じました。

――相手の中では誰が一番すごかった?

 誰だろう、分からないです。チームとしてうまいなというのは、オランダでしたけど。

――W杯前のイングランド戦で、スピードのあるウォルコットを抑えたのは自信になったのでは?

 自信になりました。ウォルコットが今まで対戦した中で一番速かったです。スピードに乗る速さ、足の軽さ、これは気を抜いたらやられるなと感じました。間合いはそこで作りました。それで、これなら戦っていけるという自信を得ました。

――オランダのエリア選手も速かったのでは

 いや、おれが1対1で感じたのはウォルコット(の方)。こいつは速いなと思いました。

――長友選手はずっと「チームはこれから良くなる」と言い続けていたが、明確な根拠があったのか?

 批判されてもブレることなく、僕自身も目標に向かってやることはブレなかった。僕の考えでは、苦しいときこそ成長できるチャンス。(調子の)良いときは何も考えることなく波に乗っていけるけど、悪いときにどう乗り越えていくかで人との差が出るなと考えているので、こうやって批判されてチームが良くない状態であっても、これを乗り超えたら絶対に強いチームになれると確信を持っていました。

――選手間のミーティングもあったから、乗り越えられた?

 スイスの時もみんなでミーティングをして、その時は真剣で闘莉王さんが「おれたちはヘタクソなんだから、泥臭くやろう」と言ったり、戦術的な話でどうやってボールを奪うのかという話の中で、自分からも要求をしました。

――個人的にも成長できた?

 メンタル的にも人間的にもサッカー選手としても確実に成長できたかなと、この1カ月半で実感してます。

――昨日は眠れなかった? なぜ1人になりたかった?

 時差ボケじゃないですかね。ずっとみんなといたので、部屋で1人で好きなことができて気持ち良かったですね。合宿では1人部屋でも緊張感がずっとあるので。家に帰って最初は……とりあえず今年厄年でお参りにいったりしたので、札とかのやつをまずやって、ありがとうございましたとあいさつしました。あとは、家に入って「ただいま、ありがとうございました」って(笑)、「これからもよろしくお願いします」っておっきい声で言いました(笑)。

長友「無名だった選手でも、W杯の舞台に立てることを証明できた」

――アフリカは、過ごしやすかった?

 伸び伸びやれたし、環境も合ってきた。野生の動物が結構いて、触れ合いたいなと思っていた。バッファローとか猿とか。ライオンは見たかったけど、いなかった。興奮した。野獣の心が。(仲間意識?)そうそうそう。いや、ホンマ。朝の5時からオレが集会をしているっていう話になっていて「皆さん、朝からうるさくてスイマセン」とか言って(笑)。

――本田選手と2人でいる姿がよくテレビに映っていたが、一緒にいた時間は長かった?

 長かったですね。部屋も横でしたし。いろんな話をしましたよ。サッカーの話、プライベートのことも……(笑)。あ、思い出し笑い。でも、サッカーの話が多かった。これからおれたちが成長するために、どういうことをやっていけばいいのかとか、メンタル的な話だったり、僕の体幹の講義だったり。真剣に聞いてくれるの、あいつぐらいなんですよ。でも、やっぱりあいつは上に行きたいから、めっちゃ真剣に聞く。ヤバイですよ。あいつ、普段から骨盤を立てるの意識しているし。もう練習風景を見ていたら分かる。トレーニングのときから骨盤を立ててやっている。「走るとき、力みすぎ」とか言って。あいつ、ホンマに真剣ですよ。
 スイスで1回、自由時間があって、あいつと一緒に日本料理屋にメシを食いに行ったんですよ。もう、ホテルから日本料理屋まであいつ、骨盤意識して歩いてましたからね(笑)。でも「お前、伸びしろあるな〜」って言ってね。なかなかできないですからね、普通は。あいつ、これからもっといきますよ。僕は確信していますけど。師匠と弟子? 体幹に関しては完全にそうですよ。

――中村俊輔選手は、あまり試合で出場機会がなかったが

 試合に出てほしいと思っていたけど、試合に出られなくてもサポートをしてくれて、水を運んだり、荷物を持ったりしてくれていた。あらためてすごい人だなと感じました。

――普段と疲れ方は違った?

 なぜか3日後に疲れが出たりすることはありました。それが高地のせいなのか、W杯だからなのか、すべてつながっているのだろうとは思いますけど、今までと違うような感覚はありました。

――イチローの本を持っていくと言っていたが

 持っていきましたし、もちろん、役に立ちました。あとは、ハセさん(長谷部誠)から『ニーチェの言葉』というのを飛行機の中で読んでいたのを奪い取って読んだんですけど、人生を考えられて良かったですね。「何に対しても喜べ」という言葉とか、「1日、1つでもいいから人に喜びを与えろ、それが自分に返ってくる」とかね。素晴らしいなと思いました。だから、喜びを与えられるように努力しないとね。

――長友選手にあこがれを持つ子供が増えたと思うが、彼らにメッセージを

 僕みたいな才能のない、ずっと無名だった選手でもW杯の舞台に立てることを証明できたと思う。今、悩んだり、うまくいかないことがあっても、あきらめずにしっかりと、自分で努力できれば夢はかなう、というメッセージを伝えてください。

――W杯前にテレビ番組で対談したマツコ・デラックスさんへのメッセージは?

 応援ありがとうございました。あの時に会えて「長友デラックス」になれたから、今の自分がありますと(笑)。

――海外からのオファーも増えたようだが

 光栄なことですけど、僕はFC東京の選手なので。(オファーのことは)これから考えます。代理人の方といろいろ相談して。

――南アフリカまで応援に行かれたお母さんに言いたいことは?

 母さんがいなかったら、今の僕はこの世にいないのでね、本当に感謝しています。でも、母さんだけじゃなく、いろんな人たちに支えられて今の自分があるので、本当に感謝しています。

<了>

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