布ジャパンが世界と戦うには=U−18日本代表布啓一郎監督インタビュー第1回

小澤一郎

ユースダイレクターとU−18代表監督を兼任する布氏 【スポーツナビ】

 2008年10月から11月にかけてサウジアラビアで行われたAFC U−19選手権準々決勝で日本は韓国に0−3で敗れ、9月にエジプトで開催されるU−20ワールドカップ(W杯)2009の出場を逃した。日本がU−20W杯(旧称ワールドユース)本大会の出場を逃したのは実に16年ぶりのこと。この敗戦をきっかけに日本では育成の危機や指導の画一化による弊害が声高に叫ばれるようになったが、この状況下でU−18日本代表監督に就任したのがユース(若年層)育成のトップとしてJFAユースダイレクターを務める布啓一郎氏だ。
 育成トップの人間がU−18日本代表監督を兼任することは一見、「異例の人事」と見えるかもしれないが、本人は「それぞれ分けて考えるべき」と冷静に受け止めている。今回、布氏が指揮を執るU−18日本代表は、当面はU−20W杯2011(コロンビア開催)出場を目指し、その先にある2012年のロンドン五輪、そしてA代表への選手供給を目指す。第1回の今回はまず、“監督”という立場で布氏にU−18日本代表のチーム作りや指導者としての哲学を語ってもらった。

目標はアジアでチャンピオン、そして世界でチャンピオンになること

U−18代表は途切れたU−20W杯出場権を再び獲得するために、アジアの戦いに挑む 【Photo:松岡健三郎/アフロ】

――まずは、U−18日本代表の監督に就任した経緯を教えて下さい

 基本的には技術委員会の推薦を受けて、理事会で承認されるという流れです。わたし自身が技術委員の1人なので自分で自分を推薦するわけにはいきませんが、光栄なことに候補の1人に挙げていただきました。やはり、サッカーコーチとしてはピッチにいたいですから、素直に「やらせていただけるんだったら」ということで引き受けました。

――ユースダイレクターとの兼任はリスクがあることではないですか?

 確かにややこしくなるかもしれませんが、それぞれ分けて考えるべきだと思います。例えば、わたしが今作っているチームが評価されずに、「職を引いてもらうよ」ということになれば、それは監督としてのわたしの評価であり、それを受け止めればいいのかなと思っています。兼任についてはおそらく、いい面、悪い面、両方あると思います。大変になることもあるだろうし、責任はどうなるんだということもある。ただしこの時代、いろんなことを決定していく中で、1つの決定をしたらすべてがストロングポイントだけでOKになるということはありません。何の決定をしてもストロングがあるが、ウイークな点も少しある。その中からプラスとマイナス面を考えた上で、何を選ぶかだと思います。

――U−18日本代表の今後の目標は?

 目標というのは(U−20W杯に)出場することですけれど、まずはアジアでチャンピオンになること。そして、世界でチャンピオンになること。なぜならば、1999年に日本は準優勝していますよね? ということは、そこが今までの最高位で、やるんだったら自分たちが一番になろうよ、という目標の下にどうするかを考えていきたいです。

技術力がストロングになっていない

――今年行われるU−20W杯の出場を逃したことによって浮かんだ課題をあらためて振り返っていただけますか?

 前回のチームではなく、日本の方向性として日本というのは技術力と運動量と組織力の3つで勝っていかなければいけません。技術力の面で言うと、すごく多彩なフェイントができる、短い時間にたくさんボールを触ることができるというのは日本人のストロング(ポイント)だと思います。ただ、今のサッカーはすごくハイプレッシャーな中でのプレーが求められます。よって、もっとシンプルに、例えばプレッシャーの中でも、動きながらでも、相手の守備ブロック中央のバイタルエリアとかその背後の一番厳しいスペースでボールを受ける技術を身に着ける必要があると思います。

――AFC U−19選手権準々決勝の韓国戦も含めて、厳しい場所でボールを持つことはできていませんでしたか?

 できていないということではなく、抜きん出ていなかったということです。日本のアベレージが決してアジアの中で下というわけではなく、アジアのほかの国々が徐々にレベルを上げてきている中で、本当は一番ストロングにすべき技術力がストロングになっていなかったということでしょう。

――それは単純に他国のレベルが上がったからですか?

 それもあるし、日本の選手は左右両足蹴れるのか、シュートレンジの広さとかも含めてシンプルに止める、蹴るということが本当にできているのかをわれわれコーチ陣はシビアに見ていく必要があると思います。

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著者プロフィール

1977年、京都府生まれ。サッカージャーナリスト。早稲田大学教育学部卒業後、社会 人経験を経て渡西。バレンシアで5年間活動し、2010年に帰国。日本とスペインで育 成年代の指導経験を持ち、指導者目線の戦術・育成論やインタビューを得意とする。 多数の専門媒体に寄稿する傍ら、欧州サッカーの試合解説もこなす。著書に『サッカ ーで日本一、勉強で東大現役合格 國學院久我山サッカー部の挑戦』(洋泉社)、『サ ッカー日本代表の育て方』(朝日新聞出版)、『サッカー選手の正しい売り方』(カ ンゼン)、『スペインサッカーの神髄』(ガイドワークス)、訳書に『ネイマール 若 き英雄』(実業之日本社)、『SHOW ME THE MONEY! ビジネスを勝利に導くFCバルセロ ナのマーケティング実践講座』(ソル・メディア)、構成書に『サッカー 新しい守備 の教科書』(カンゼン)など。株式会社アレナトーレ所属。

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